rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

6月1日 評論「内部予備動員は、全群衆的な事業」

 

 「内部予備の動員」は、「正面突破戦」の鍵とも言える概念であるが、標記評論は、それについて論じたものである。

 評論は、それを「全群衆的な事業として展開すること」、すなわち、勤労者の積極的な参画を実現することの重要性を強調した上で、そのための「重要な要求」を2点あげる。

 第一は、「政治事業を先行させること」である。そう聞くとイデオロギー偏重のような印象もあるが、実際は、取り組みに向けた「動機付け」「意欲喚起」がまず必要ということであろう。評論曰く、「内部予備は人々の心臓の中にある。思想的に発動された人には多くのものが予備として見えるが、思想的に覚醒されていない人は、目の前の予備も見ることができないものだ」。確かにそのとおりであろう。

 第二は、「大衆的技術革新運動を力強く展開すること」である。これは、いうまでもないところで、説明は省略するが、興味深いのは、生産現場での発明・考案などを推奨する制度として、「発明証書」「創意考案証書」「科学技術成果登録証」などの名前が紹介されていることである。これらを受けることによって、、具体的にどれほどの実利が得られるのかは定かでないが、少なくとも、そういった形で制度的に「発明・発見」などを顕彰してることが分かる。「内部予備動員」で成果を上げている職場には、それらがあふれているという。

 評論は、最後に、「内部予備動員」の意義について、「単純に何かが不足しているからといって行う事業」「一定の期間を定めて進める事業」ではないとし、「あるだけの労力と資材、資金、設備によって、より多く、より良く生産し、より速く、より高く前進飛躍していけるようにする」ためのものであり、「この事業は、一貫して推進してこそ、その実効と威力が現れることになる」と主張している。

 以上の主張を総合すると、「内部予備動員」というのは、戦後日本の製造業などで幅広く推進された、一種の生産性向上運動といえるのではないかとの印象を受ける。そのための活動を広範にかつ粘り強く、継続的に推進する必要を訴えるのが本評論の趣旨でもあるようで、それは間違ったものではないと考える。ただ、そのような取組みを慢性化させることなく、長年にわたり維持継続するためには、相当の努力・工夫が必要であろう。