rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2月27日 論説「目標が高くてこそ変革が起きる」

 

 標題の割には、現実主義的バランス感覚を示した主張をしている。というのは、「高い目標」を設定することを求めながらも、その意味について、「実現可能性が担保され、新たな発展の跳躍台になる科学的で動員的な計画こそ、まさに我々が言う高い目標である」として現実的な目標設定の必要性を主張し、それを欠く誇大な目標設定については、「主観的欲望や臨時的観念に基づいた荒唐で空虚な目標は形式主義と要領主義を生み混乱と沈滞をもたらす」と厳しく批判しているからである。

 もちろん、基本的な主張は、「変革」を起こすことであり、幹部の在り方について、「狭小で近視眼的な見解から脱皮できず、はっきりとした見識や目標もない幹部をどうして革命の指揮メンバと呼べるだろうか」と守旧的姿勢を批判する一方、「より先進的なもの、革新的なもの、発展的なものを志向し探究し、実質的な事業成果へと続けるとき、幹部の本分をまっとうしたといえる」と改革の実践に取り組むことを求めている。

 何故、それほど「変革」を求めるのであろうか。その理由は、「今、史上最大の封鎖圧迫で我々を窒息させようと狂奔している敵対勢力どもの策動と我々内部に存在する不合理な事業体系と秩序は、我々の前進を阻害する主客観的な障害となっている」との認識にあると考えられる。

 ここで、「我々内部に存在する不合理な事業体系と秩序」が具体的に何を意味するのは判然としないが、制度的なものであれば、関連の規程を改めれば済むことであり、むしろ、風土・習慣的なものではないかと思われる。そして、それは、「史上最大の敵どもの策動」に匹敵する重大な問題として存在していると認識されているのである。

 本日掲載した社説についての記事で指摘した内容(意識改革志向)ともあわせ考えると、金正恩は、一種の「文化大革命」を発動しようとしているようにも思われる。ただし、少なくとも現在までのところ、そこに「紅衛兵」の姿は見えない。ひたすら「敵どもの策動」への対抗と「白頭山精神」を説くばかりである。それでは、おそらく「文革」の推進の動力としては不足であろう。もし、彼が本当にそれを徹底したいのであれば、社会のどの部分に「紅衛兵」の役割を担わせるかを真剣に考える必要があると思われる。既存幹部にそれを期待するのは、猫に自らに鈴を着けることを期待するのと同じである。