rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

12月30日 評論「人民軍隊の行進速度にしたがって」

 

 中央委員会全体会議における金正恩の演説において、軍事面でどのような言及がなされているのか、現時点で明らかになっているのは、前掲の同会議に関する記事に記載した内容(⑤部分)だけであるが、標記評論は、それを示唆するものとも考えられる。結論から言うと、軍隊を経済建設に一層活用していくことが一つの柱になっているのではないか、ということである。そのような方針は、先の党中央軍事委員会拡大会議に関する報道(12月22日本ブログ記事参照)でも示唆されたところである。

 評論は、「今日、我が人民軍軍人たちは、社会主義強国建設の主要戦闘場ごとにおいて旗手、突撃隊としての使命をまっとうしている」とした上で、軍に対するそのような任務付与の方針は、金正日が創始し、金正恩によって更に強化されたものであることを強調している。すなわち、「我が人民軍隊を祖国保衛のみならず社会主義建設もみな受け持ち遂行する革命の主力軍として打ち立てて下さった将軍様金正日)の不滅の業績は、敬愛する元帥様(金正恩)の賢明な領導によって新たな高い段階においてより燦然とした光を放っている」というのである。

 そして、結びの部分で、金正恩の指導が続く限りそのような軍の活動方針が今後とも堅持されることを次のとおり確認している。

「人民軍隊を社会主義強国建設の主力軍として打ち立て、人民の夢と理想を実現していく歴史の荘厳な新時代を切り開いていかれる敬愛する元帥様がいらっしゃるがゆえに、我が人民軍隊は、祖国保衛においても社会主義建設においても必勝不敗の威容を余すところなく轟かしていくであろう。」

 金正恩の中央委員会報告の翌日に掲載された本評論の内容が金正恩の報告内容と矛盾するものとは到底考えられない。経済制裁の一層の強化などの事態も念頭におきつつ、軍を含む国力を経済建設に一層強力に動員することによって、制裁に耐え得る「自力更生」型の「持久戦体制」を構築する(それを基盤により強い姿勢で対米交渉を進める)ことこそ、今、金正恩が目指しているところではないかと予測する所以である。少なくとも、軍事力の全面動員につながる「決戦」を志向しているとは考えられないのである。