rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

12月5日 金正恩白頭山騎馬視察行(再論)

 

 標記について、昨日は時間の都合で簡単にしか書けなかったので、注目点をいくつか思いつくままだが、補足したい。

 第一は、金正恩白頭山戦績地での革命伝統教育について、「特に革命の指揮メンバーたち(は)・・・白頭山革命戦績地踏査を通じた『白頭山大学』を出なければならない」と言っている点。彼の幹部に対する不信感がにじみ出ているのではないかとも思われる。

 第二は、思想教育強化の契機とするための視察に何故、軍人多数(総参謀長、軍種司令官、軍団長)を帯同したのか。最大の理由は、金正恩の馬上姿から「抗日闘争」時の金日成を彷彿させたかったからではないか。そのためには、やはり軍人を引き連れている必要があったのではないか。ちなみに、李雪主夫人とのツーショット姿も、金日成金正淑を描いた革命絵画に酷似しているように感じる。次に、これは推測であるが、三池渕郡第3期工事への軍人の動員である。この直前、金正恩は第2期工事の竣工式に出席した際、第3期工事を党創建75周年に向けて推進するよう発破をかけていた。全軍を挙げての支援態勢構築を指示した可能性が考えられる。そのために、軍中央の高官ではなく、各軍種、軍団の責任者を呼び、各単位ごとの分担などを決めたのではないか。あるいは、金正恩が今後の実施を指示した白頭山戦績地の冬季踏査の先陣を各地軍部隊が担う可能性も考えられる。これも「八甲田山死の行軍」にならないようにするためには、精鋭を集めた周到な準備が必要だからであろう。

 第三に、その後の関連動向だが、労働新聞は、5日、「白頭の革命伝統を永遠に固守し、全面的に具現していこう・・・」とのタイトルの下、金正恩白頭山視察を受けた各界各層人士の寄稿を掲載した。そこで強調されているのは、思想教育強化に加えて、そのような不屈の精神に基づく経済建設への献身である。内閣副総理金徳勲(音訳)は、「苦難と試練が千万重なろうとも、白頭の革命精神、自力更生の革命精神さえあれば我々は我々の力でいくらでも良く生きていくことができ、我々式に発展と繁栄の道を開いていくことができる」と述べている。これは、まさに金正恩が言いたいことではないだろうか。また、朝鮮人民軍将領方光復(音訳)は、「革命伝統教養をはじめとした思想教養事業を攻勢的に多角的に、立体的に展開するときだけが人民軍隊を不敗の革命強軍としてしっかり準備させることができる」とした上で、「『祖国保衛も社会主義建設も我々がみな担おう!」とのスローガンを高く掲げ、社会主義強国建設の戦区ごとに『わかりました』の忠誠の答えを高く響かせる人民軍隊特有の闘争本態、創造本態を一層高く発揮していく」と述べている。一方、彼は、例えば「戦闘準備態勢」とか「演習」の強化などには言及していない。ここにも、金正恩白頭山視察行の主たる狙いが、思想引き締めによる経済建設の促進にあることが端的にしめされていると言えよう。