rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

12月22日 党中央軍事委員会拡大会議を開催(改訂版)

 

 22日、北朝鮮が標記会議開催を報じたが、議事・決定事項については抽象的表現にとどまり、具体的な内容は判然としない。

 我が国内外の大半の報道は、例によって、米朝交渉の「年末期限」を念頭に、「新路線」すなわち対米強硬策に関するものとの見方を報じているが、果たしてそうであろうか。

 同会議に関する北朝鮮報道内容の詳細な紹介は省くが、要するに、朝鮮人民軍にとどまらず武装組織全般にかかわる構造的な組織改編、部隊配備場所の変更、高位軍人の人事異動、更には軍内の問題点を指摘した上で、その是正策指示などを行ったようである。

 そのような措置を取れば、当然、新体制が定着するまでの間、軍の即応態勢が低下することは避けがたいところであろう。仮に、いま、米国の反発が予想されるほどの強硬措置(大陸間弾道ミサイルの発射など)を想定しているのであれば、そのような措置を敢えて行うであろうか。

 むしろ、今次会議の決定は、北朝鮮の報道から推測するに、本ブログでもかねて紹介してきた、思想・精神教育強化(その中には幹部の綱紀粛正なども含む)及び「自力更生」に基づく経済建設促進などの最近の政策傾向の一環として、つまり内政的な側面から軍の改編を進めたものと考える。

 そのような推論の根拠としては、①出席者中に党中央委組織指導部副部長が含まれていること、②「最近、人民軍隊で表れている長短所と至急克服すべき問題について指摘」されたなどの表現があること、③金正恩の言葉として「祖国保衛も社会主義建設もみな担おうとの人民軍隊の伝統的で誇りある、栄えあるスローガンを一層高く掲げて・・・」との表現があること、などをあげることができる。

 金正恩は、そういった措置を「対外関係緊張への対応のための軍事力の一層の強化」との名目の下に推進しようとしているのではないだろうか。軍事力の改編に際して、「強化」と言うのは当然であって、今着目すべきは、それが「核保有」を前提とした強化なのか、あるいは、「非核化」を視野に入れての(つまり核なしでも一定の抑止力を確保できるような)ものなのか、という点であろう。そのどちらに進むのかは、もう少し慎重な見極めが必要であろう。

 そういった検討を抜きにして、軍関連の動きと言えば、無条件にすべてを対米交渉、「年末期限」に結び付けて「戦争準備」のように論じるのは、思考停止・視野狭窄と言わざるを得ない。