rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

12月20日 評論『輸入病をなくすことも社会主義守護戦である』

 

 標記評論には、「敬愛する最高領導者金正恩同志の名言解説」との副題が付されている。つまり、標題は、金正恩の「お言葉」である。「自力更生」を語る際にしばしば用いられる表現として、「輸入病をなくす」がある。本評論は、その趣旨を敷衍したものである。

 評論は、「輸入病をなくす」ことの意義、重要性について、まずは、経済制裁への対抗となることを挙げる。すなわち、「今、敵対勢力は我々の自立経済の基礎をだめにし、我々を経済的に窒息させるために、悪辣な封鎖圧迫策動に執拗に執着している。輸入病を排撃し必要なすべてのものを自体で生産保障することで、仇敵どもの策動を粉砕し、自立経済の威力と生活力を余すところなく発揚することができる道がある」と説く。

 しかし、評論は、それにとどまらず、「輸入病をなくすことは、また、我々の思想陣地を堅固に固めていくための重要な政治的問題」でもあると主張する。その理由は、人々が輸入品への依存するようになると、「別の国に対する幻想と依存心が芽生え、後には社会主義の優越性に対する確信が揺らいでしまうことがありうる」からである。

 では「輸入病をなくす」ために何をなすべきか。まず、「輸入しなければ現行生産と建設を行うことができず、現代化も難しいと見る敗北主義的観点」を「主打撃対象」とした思想戦を展開することを挙げる。同時に、「原料、資材、設備の国産化を積極的に実現」すること、更には「生産物の質を高めるための闘争を力強く展開すること」を訴える。とりわけ、後者については、「我が国の生産物が他国の物より、より良い物であってこそ輸入病をなくすことができ、我が民族第一主義、我が国家第一主義が生活に基礎を置いた真実の強固なものとなることができる」として、前述の「社会主義の優越性」問題とつながる視点から、思想的意義を強調している。

 以上のような主張から見て取れるのは、「輸入病をなくす」ことが単に経済制裁に伴う外国物資等の不足に対応するための、必要に迫られての措置というにとどまらず、より積極的な「生活に基礎を置いた」形で体制の正統性を納得させ得る生産基盤の構築を目指す施策として提唱されていることである。

 そう考えると、「経済制裁」は、そのような施策を必要とする要因であると同時に、人々にそのような施策の実践を促進する動機付け要因としても作用しているとも言えよう。そのような必要性と動機付けを得つつ、広い意味での「自力更生」路線を続けいていくことは、北朝鮮が考える「強国」建設に向けた王道とさえ考えられる。

 今日、米朝交渉に関し、一般には、北朝鮮が「制裁緩和の先行」に固執し交渉膠着の原因になっているとの印象が強い。在野の身の上で、米朝交渉の実情は何とも知りようがなく、外野からの無責任な印象談ではあるが、本評論からうかがわれる上記のような国内宣伝の在り方を見ると、本当に北朝鮮がそれほど早期の「制裁解除」に固執しているとは考えにくい気がするのだが、どうなのであろうか。