rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2月11日 評論「今日の正面突破戦の主な闘争対象」

 

 本評論は、標題の示すとおり、「正面突破戦」が目指すところ、すなわち「突破」しようとしているものが何かを明確に語るものである。

 まず、冒頭で「正面突破戦」の狙いについて、「我々の主体的力、内的動力をくまなく強化することによって、敵対勢力どもの圧殺策動を無力化させ、社会主義建設の新たな活路を開く」こととし、それを進めるためには、「(その)内部的力を強化する上で障害とある主たる闘争対象を正確に知らなければならない」と主張している。

 その上で、評論は、「今日、我々の前進発展に支障を与える躓きの石、敵どもの策動よりもっと危険なもの」として、「他人に対する依存心と輸入病、敗北主義と懐疑主義、本位主義と特殊化、無能力と無責任性」をあげ、これらを三つに分かって、それぞれの危険性を解説している。

 第一は、「他人に対する依存心と輸入病、敗北主義と懐疑主義」に対しては、「自主意識、必勝の信念を揺るがし、自力富強の大業実現に障害を与える悪性腫瘍と同じ」と批判する。ここで「懐疑主義」というのは、党の指示に従っていって本当にうまくいくのかという疑念を持つこと、つまり「必勝の信念」を持てない現象を指す概念であろう。

 第二は、「本位主義と特殊化」である。「本位主義」とは、各単位・機関などが自己の利害関係を優先させることで、「機関本位主義」「単位本位主義」などの総称である。「特殊化」とは、自己の単位・機関の特殊性を主張して、一般的な法規・指導などの適用除外を要求しあるいはそれに従わない現象を指すものであろう。ただ、それが軍、党などの傘下にある「特殊機関」に対するものであるのか、あるいは、もう少し広い意味で一般の企業所などが何やかやの特殊事情を主張する現象を念頭においたものかは判然としない。いずれにせよ、それらに対しては、「国の全般的利益を害し、国力を悪化させる重要な要因となる」として批判し、更に「万一、特殊化の帽子をかぶって、国家的利益は眼中になく、自己の単位の狭小な当面利益だけを追求するならば国の全般的で正常的な発展に厳重な後禍を及ぼすことになる」と警告している。

 第三は、「無能力と無責任性」に対しては、「各部門、各単位の事業を党が望む高さに持ち上げる上で、制動機的役割を果たす」としている。以前にも「労働新聞」紙上で、、幹部に対し「自分が所属組織の「制動機になっていないか自問せよ」との趣旨の主張が掲載されていたが、この評論の主張も、それと符合するものであり、主に幹部を念頭に置いての訴えと考えられる。すなわち無能・無責任な幹部は、「闘争対象」にされることになる。

 ちなみに、以上の「闘争対象」のうち、第一と第三は、個人の発想なり執務姿勢・能力の問題であるが(もちろん、それはそれで困難であろうが)、第二は、各機関・単位の利害が直接反映される問題であるだけに、それを文字通り実践させようとすれば、相当の抵抗・摩擦が生じる可能性もあろう。いずれにせよ、それらこそが「敵どもの策動よりもっと危険なもの」なのであり、換言するならば、それらを打倒するために開始したのが「正面突破戦」であったということになろう。