rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

12月30日 「党中央委7期5次全員会議第2日会議進行」

 

 金正恩の熱弁は、29日の会議2日目にも続いたようである。報道写真によると、初日には黒っぽい上着を着て演説していたが、2日目会議では、白いシャツ姿になっている。記事でも、同日、彼が「党中央委員会事業状況と国家事業全般に対する報告を継続」したと報じている。

 その演説内容については、まず「現時期、国家管理と経済建設をはじめとした国家建設全般において提起されている問題(複数)を全面的に解剖学的に分析」したとされる。この表現からも、様々な個別事例なども含めて詳細・具体的な問題点の指摘や批判がなされたことがうかがえる。

 その上で、そのような問題を踏まえた「国の経済発展と人民生活において決定的な転換をもたらすための闘争方向とその実践的方途について具体的に提起した」のであろう。そこで示されている主な事柄は、次のとおりである。

①経済体制の整頓:「国の経済事業体系と秩序を合理的に整頓し、強い規律を立てることについて」、「人民経済の主要工業部門(複数)の深刻重大な実態を至急正すための課題」

②農業の全面的改革:「農業生産を決定的に増やすこと」「科学農事第一主義を高く掲げ、多収穫熱風をより強く起こし、畜産業、果樹業など農業のすべての分野で新たな転換をもたらすための重要な問題」

③科学、教育、保健事業の改善:「科学研究事業に対する政策的指導をしっかり行うこと」「教育部門と保健部門の物質技術的土台をしっかりさせること」など

④生産管理と環境保護・防災対策強化:「増産節約と質向上運動を力強く展開」「生態環境を保護し、自然災害防止対策を徹底」

⑤安全保障強化:「醸成された情勢の要求に合うよう国の自主権と安全を徹底して保障するための積極的で攻勢的な措置(複数)を取ることに言及されつつ、対外事業部門と軍需工業部門、我が武装力の任務について明らかにされた」

⑥社会綱紀確立:「反社会主義、非社会主義との闘争を高い強度で展開」「勤労団体事業を強化」「全社会的に道徳気風を強く立てる」

 世間の報道は、以上のうち、専ら⑤に焦点を当てているが、それは全体の中の一部に過ぎない。演説の大半は、経済制度の整頓をはじめとした国内体制の大幅な改革の訴えに向けられている。報道でしか情報を知りえない多くの国民は、この会議ではもっぱら戦争に向けた準備をしているとの印象を持つのではないだろうか。

 また、⑤に含まれる「攻勢的」(공세적)との言葉についても、日本の報道では「攻撃的」と訳されているが、一般に「積極的」とか「主導的」とかの意味で用いられることが多く、ここでも、積極性を強調する以上の、文字通りの「攻撃的」との意味が含まれているかは疑問である。

 なお、②の農業面の具体的内容は、おそらく昨29日の本ブログで紹介した「論説」が主張したところと考えられる。まさに演説の当日に同論説が掲載されたことは、偶然とは考え難く、農業問題がそれだけ重視されているということを示すものと考えられる。

 いずれにせよ、会議は更に続く。3日目は、参加者の「討論」であろうか。ちなみに、中央委員会全体会議が複数日に及ぶのは、金日成時代末期の1990年1月5日から9日まで開催された第6期第17次会議以来とのことである。今次会議は、いつまで続くのであろうか。