rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

12月24日 社説「偉大な領導者金正日同志の革命武力建設業績は祖国青史に永く輝くであろう」

 

 1991年12月24日に金正日朝鮮人民軍最高司令官に就任したことにちなみ、同人の軍事面での業績を称えたもの。

 金正日の業績全般について、現指導部がいかに描写しているかについては、去る12月17日、同人の命日に際しての本ブログ記事において紹介したとおりであるが、この社説は、その中でも、とりわけ軍事面に焦点を当てて論じたものである。先般の党中央軍事委拡大会議において軍事面での改編が決定されたこととも関連し、その内容を推測する上でも注目されるものといえよう。

 社説は、金正日の軍事面の業績について、思想面、軍備面そして継承問題の3つ柱をあげている。

 思想面の業績とは、「我が革命武力を白頭の革命伝統によってしっかりと武装した無敵必勝の革命強軍として逞しく育てられた」ことである。このような表現がまさに最近の「革命伝統教育」強化方針に符合する形で示されたものであることは言うまでもないところだが、いずれにせよ、北朝鮮において「軍事力強化」としてまず掲げられる事項が軍の思想的統一であることには留意が必要であろう。

 軍備面の業績とは、「自立的で現代的な国防工業を準備され、高貴な革命遺産として譲り渡して下さった」ことである。その結果、「我々の革命武力は現代的な攻撃手段と防御手段をすべて備えた無敵必勝の革命強軍として今日っ化された」とされる。しかし、ここで注目すべきは、やはり「核」について直接の言及がないことであろう。

 継承問題とは、要するに後継者として金正恩を選んだことである。すなわち、存命中から「敬愛する元帥様(金正恩)と主体的革命武力建設のための路線と政策も共に作成され、戦闘準備完成軍力強化のための現地視察の道も共に歩まれた」とし、「偉大な将軍様金正日)の遺訓にしたがって敬愛する元帥様を革命武力の最高司令官として高く奉じた」ことをあげている。

 社説は、その上で、このような「将軍様の偉業を最後まで完成」することを訴えているが、その具体的方策として掲げられているのは、「偉大な将軍様の崇高な愛国念願、強国念願を輝かしい現実として花咲かせている不世出の偉人」である金正恩の指導の下で、①「正規武力と民間武力全般に党の命令指示を無条件に徹底して貫徹する強い革命的軍風を確立」、②「共和国武力のすべての将兵が高度の警戒性を持って党と革命、祖国と人民の安全を頼もしく守護」、③「社会主義建設の難しく大変な戦区ごとで進撃の突破口を切り開く旗手、突撃隊になる」ことなどである。あわせて、「軍民大団結」が強調され、④「人民を助けようとのスローガンを高く掲げ人民のための良いことをより多く探し行う」ことも求められている。

 このような課題の設定からは、軍が現実に期待されているのは、軍事力の発動などの軍事的側面よりは、むしろ民生面での貢献・活躍であることがうかがえる。前述のとおり党中央軍事委拡大会議が軍事面での改編を決定した直後のこの時期に、このような社説が掲載されたことは、非常に示唆的といえるのではないだろうか。