rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2月2日 論説「自力富強のしっかりとした土台を準備して下さった絶世の愛国者

 

 2月に入って、同月16日が誕生日の金正日を回顧・顕彰する記事が増えているように思われる。標記論説もその一つであり、「絶世の愛国者」は、もちろん金正日を指している。

 本ブログで以前にも指摘したとおり、その金正日が準備して下さった「自力富強の土台」をいかに描くかは、今後、何を継承(大切に)していくかという問題に直結するまさに今日的問題であり、そのような視点から本論説の趣旨をたどってみたい。

 同論説は、「自力富強の万年礎石を準備して下さった偉大な将軍様金正日)の不滅の業績」として、大別すると、「自立的な物質技術的土台を強化されたこと」と「透徹した自主精神と高い創造能力を兼備した強力な主体的力量を育てられたこと」の2点をあげている。そして、前者に関しては、「軍事強国」の建設と「自立的民族経済」の確立を、後者に関しては、思想面での統一と科学技術の振興を主に論じている。

 ここで注目されるのは、「軍事強国」建設に関する部分で、核兵器やミサイルへの直接的言及がないばかりか、軍備そのものについての言及も関単にすまされ、主張の大半が「国防工業」の整備に費やされていることである。そのさわりは、次のようなものである。

 「将軍様の大きな労苦と賢明な領導によって、我々の国防工業は多方面的で総合的な生産体系と大きな生産潜在力を備え、主体化、現代化された国防工業へと面貌を一新し、我が国は誰も敢えて手出しできない世界的な軍事強国へと転変した。」

 「今日、我々の国防工業が党において方向さえ与えれば、世間にない強力な武器体系も引き続いて開発し、その威容を高く轟かせていることも、偉大な将軍様の業績を離れては考えることはできない。自衛的国防力の固い地盤があるからこそ我が国家と人民の安全は確固として担保されている」

 このうち、「多方面的で総合的な生産体系」との表現及び「世間にない強力な武器体系」への言及は、昨年の一連の短距離ミサイル(いわゆる「放射砲)含む)の開発を念頭に置いたものであり、「核兵器一辺倒」ではなく、様々な通常兵器の組み合わせを基調とした軍事力への志向を反映したものといえよう。更に全体の趣旨からは、(軍備によってではなく)「国防工業」の整備そのものによって安保が担保されているとの発想もうかがわれる。総じて、これら主張には、「万能の宝剣である核兵器」を金正日の遺産として高唱したかつての主張とは、明白な違いが存在するということができよう。

 科学技術振興に関する部分で興味深いのは、金正日の教えとして、「立ち遅れたものを創意考案する式の自力更生ではなく、現代的な科学技術に基づいた自力更生をしなければならない」との言葉を紹介していることである。金正日がいつどこでそのような発言をしたのかは定かでないが、いずれにせよ、「自力更生」に関するこのような発想は、まさに今日の志向の反映といえよう。

 現在の金正恩指導部は、以上のような意味において、金正日の遺訓を継承発展させていくことを目指していると理解すべきであろう。