rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

5月14日 社説「軍民大団結の威力で正面突破戦の勝利を成し遂げて行こう」

 

 標記社説は、北朝鮮における「軍民大団結」の特性を自賛するとともに、その更なる発揮を求めたものである。

まず、その特性として2点をあげている。

 第一は、「社会主義建設において絶え間ない奇跡と偉勲を創造していけるようにする原動力である」ことである。これが意味するのは、軍の経済建設面での貢献であり、その具体例を指摘した上で、「(そのような)現実は、軍民大団結が発揮する威力には限界がないということをはっきりと示している」と称賛している。

 第二は、「革命的同志愛に基づく我々式社会主義の不敗性を力強く轟かせることができるようにする宝剣である」ことである。これが意味するのは、「軍民が互いに大切に思い、ためにする熱い血肉の情が行きかう中で我が社会の団結はより固くなる」ということである。

 社説は、今日、そのような「軍民大団結」を更に発揮して、「正面突破戦の勝利」を実現することが求められるとして、そのための課題を掲げる。

 第一は、軍に対する要求で、「人民軍隊が正面突破戦の先頭において進撃路を切り開く」ことである。この文脈で、金正恩が「社会主義強国建設の困難で骨の折れる戦区ごとで人民軍隊を立たせておられる」のは、「「人民軍隊の先駆者的役割を高め、今日の難局を打開するための・・・崇高な意図が込められている」と説明する。その上で、具体的に「平壌総合病院建設と三池渕市整備第3段階工事をはじめとした重要対象建設場において、主体朝鮮の強勇な気象を誇示する新たな建設速度、千年責任、万年保証の時代的見本を創造」することを求めている。ここで、「速度」だけでなく、「責任・保証」など「質」についても言及しているのは最近の「質重視」の流れを反映したものといえよう。

 軍に対するもう一つの要求は「経済建設のための平和的環境を軍事的に確固として担保」することであり、そのために「祖国の空と土地、海を鉄壁に守り、戦闘力を不断に強化していく」ことを求めている。

 第二は、「すべての人民」に対する要求であり、「人民軍隊の思想精神と闘争気風を見本として、直面する難関を果敢に突破していく」ことを求めている。具体的には「人民軍隊のように命令指示に対しては、些細な取引も知らない決死貫徹精神、無いものは探し出し不足するものは作り出す自力更生の精神、同志のために自分のすべてをみな捧げる火のような愛と献身の精神によって闘争」することである。ここで「取引」というのは、「全部は無理だが、これくらいならできる」とか条件闘争のようなことをすることを意味する。そういうことをせずに無条件・絶対に100パーセント貫徹するのが軍隊式という主張である。

 第三は、党組織に対する要求であり、各所属機関・単位などで「援軍、援民の気風がより高く発揮されるよう」にその役割を果たしていくことなどを求めている。

 以上のような「軍民団結」にかかわる主張は、大筋において従前と同様のものと言えるが、注目されるのは、軍に対する要求の中で「経済建設のための平和的環境を軍事的に確固として担保」するためとして、祖国保衛、戦闘力強化などに言及していることである。とりわけ最近には、軍の役割に関し、この点が余り強調されず、もっぱら経済建設への貢献だけが強調されてきた印象がある。当然といえば当然の要求であるが、改めてこれらを取り上げた背景などが注目される。

 一方、この言及は、北朝鮮指導部が「経済建設のための平和的環境」を必要としているとの認識を有していることを示すものとも言え、その意味からも注目される。敢えてそのような認識を示したのか、あるいは、図らずもにじみ出たものであるのかは判然としないが、いずれにせよ、当面、緊張激化を望んでいないことがうかがえる。