rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

1月6日 記事「在日朝鮮学生少年芸術団のための宴会」

 

 金正恩が「準備して下さった」とされる標記宴会が、5日、人民文化宮殿で開催されたとの記事。出席者として報じられたのは、金英哲党副委員長、海外同胞事業局長、青年同盟副委員長ら北朝鮮側関係者と趙明浩(音訳)京都朝鮮中高級学校校長を団長とする標記芸術団一行である。

 金英哲副委員長は、党の対韓関係部門の責任者として知られている。北朝鮮による朝鮮総連に対する指導は、ながくその職にあった金仲鱗書記など、かねてこの地位にある者の管轄下において行われてきた。この宴会の出席者の筆頭に金副委員長の名前が報じられているのもそのためであり、そのような指導体系に変更がないことをうかがわせているといえよう。そして、この点に着目するなら、朝鮮総連は、北朝鮮にとって、基本的に対韓政策を推進するための組織として位置付けられていると言って過言ではないであろう。

 同宴会に話を戻すと、金副委員長は、演説で「敬愛する最高領導者金正恩元帥様におかれては、在日朝鮮学生少年たちを総連のバトン、愛国愛族の継走棒を引き継いでいく頼もしい継走者として大切に思われ、あらゆる愛をめぐらしてくださったことについて言及」したとされる。確かに、一中高級学校の校長を団長とする同芸術団のために、金正恩が自らの名義でこのような宴会を開催したこと自体、格別の配慮といえよう。

 それに対して、趙団長も、「在日朝鮮学生少年たちは、いかなる逆境の中においても金正恩元帥様の崇高な志を奉じて在日朝鮮人運動の頼もしい後備隊、総連の主人公としてしっかり準備していくであろう」と強調した、と報じられている。

 以上の両者の発言は、北朝鮮側においても、在日朝鮮人学校の側においても、在日朝鮮人学校の学生というものは、単に在日朝鮮人一般ということではなく(あるいはそれにとどまらず)、朝鮮総連という特定組織の後継者となるための教育を受けている、ということが共通の認識となっていることを明白に物語るものである。

 在日朝鮮人学校をめぐっては、かねて生徒に対する日本当局からの教育支援金の支給をめぐって論争があり、至急を要求する側では、「朝鮮人学校も日本の学校と変わらない、同じ子供たち」である旨を盛んに強調しているように見える。確かに、朝鮮人学校には、日本の学校あるいはその他の外国人学校と同じ側面もあるであろうが、同時に外には見られない「朝鮮総連の後継者育成」という機能も果たしている(そして、本記事にみられるがごとこ、そのことを誇らしげに世界に発信している)のは前述のとおりである。にもかかわらず、そのことには口をつぐんで、ひたすら「同じ」側面だけを強調するというのであれば、欺瞞的との批判を免れないのではないだろうか。

 「尊厳を命よりも大切にする」という朝鮮民主主義人民共和国の海外公民の皆様には、そういったことも含めて朝鮮人学校の実相を明らかにした上で、要求すべきは要求するとの正々堂々たる対応を期待したい。