rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

3月6日 論説「事業における大胆性は党に対する信頼の発現」

 

 標記論説は、北朝鮮幹部の執務姿勢の実相を如実に反映したものと考えられる。

 論説は、冒頭に金正恩の「大胆性と積極性が党を信じる心から生まれるとするなら、小心性と日和見は党に対する信頼が不足しているところから生じる」との言葉を引用した上で、「信頼する」の意義を二つの側面で説明している。

 第一は、積極的に確信を持って、その指示の実践に取り組むということである。すなわち「党に対する信頼が固い幹部は党の路線と政策を絶対的なものとして、信条として受け入れ、その貫徹に自分の一身を躊躇なく差し出す」のである。

 しかし、現実は、そうではない幹部が存在するようである。論説は、彼らの姿勢を「党に対する信頼が不足した幹部は、党政策貫徹において可能性如何を論じ、時期性を確かめ、責任関係をまず考える。このような幹部は思考と実践において常に受動的であり被動的であり、少しの難関で容易に音を上げ座り込んでしまう。また、現実的に、政策的に緊要な問題を見ても見えないふりをし、知っていても知らないふりをして、批判を受けず、問題にならない程度に働く」と批判している。そして、そのような現状を踏まえ、改めて「幹部は誰でもが党政策を信念として堅持し、事業を大胆に積極的に展開していかなければならない」ことを訴えている。

 第二は、党に批判されることを恐れず、正直に行動するということである。そのためには「母なる党の熱い手が自分を守り見守っているとの固い信頼」をもたなければならないという。どういうことかと言うと、「特に幹部であるほど、我が党は誰よりも痛い笞を持って自分の使命と本分に忠実になるように手を取って導いてくれる。これは、幹部に対する我が党の誰にもない信頼と期待の表示である」ことを理解せよとの趣旨である。したがって、「(模範的な)幹部は、党の信任を推測せず保身を図らず、批判を受けても提起された問題を正確に報告する」。

 しかし、現実は、やはりそういった「信頼」を持てず、保身を図り、批判を恐れて、問題を報告せず、あるいはごまかそうとする現象が存在するとみられる。論説は、そういった幹部に対して、「幹部が事業を行う過程で時に失敗をすることもあるし、過誤を犯すこともある。問題は、このようなときに幹部の姿勢と立場がどうなのかということである。党の前でごまかしを弄し取引をするなら、このような者をどうして幹部といえるだろうか」と戒めている。

 以上の内容を総じて見ると、標題には「大胆性」との表現が用いられているが、実際は「積極性」の発揮、さらに言えば「消極性」「ごまかし」の払拭を求めたものといえよう。そこから推測するに、現在の北朝鮮の幹部の中には、党中央すなわち金正恩の指示・政策に対して、その実効性・実現可能性などに懐疑を抱き、様々な名目を弄して積極的な取り組みを回避し、「やっているいる振り」だけですまそうとする現象、責任追及を恐れる余り問題が発生してもあいまに糊塗して報告しない現象などが蔓延していると考えられる。まさに「笛吹けど踊らず」の状態に陥っているということであろう。