rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

7月2日 論説「現時期、党が重視する責任ある事業」

 

 標記論説は、「党中央委員会第7期第13回政治局会議の決定貫徹のための事業で沸き立つ 平壌市において」との共通題目の下、いくつかの関連記事などとともに掲載されたものである。

 これらが6月27日の本ブログで紹介した記事と同様、「第7期第13回政治局会議では首都市民の生活保障で提起される当面の問題が討議され、その解決のための対策が取られた」ことを受けたものであることはいうまでもない。

 同論説は、冒頭、金正恩の「人民生活問題は我が党が最も重視する問題であり・・」との言葉を掲げ、「人民生活向上において首都市民の生活保障問題は、極めて重要な位置を占める」と述べた上で、この問題の政治的位置づけを次のような二つの側面から論じている。

 一つは、「首都市民の生活保障は、偉大な首領様(金日成)と偉大な将軍様金正日)の人民愛の歴史を限りなく輝かせるための政治的事業」であるとの側面である。つまり、それは、首都建設を重視した両人の遺訓を継承・実現するものであるということであろう。

 二つ目は、「我が党の人民大衆第一主義思想、人民遺体する滅私服務精神を全国に徹底して実現するための先次的な事業である」という側面である。つまり、まず平壌における「生活保障」の水準向上を実現させ、それを全国の模範としようとの考え方であろう。このような狙いは、「首都市民の生活向上のための闘争の火の手によって、全国に人民大衆第一主義思想と滅私服務精神がより確固として支配するようにし、社会主義万歳の声がより高く轟き渡るようにしようというのが我が党の意図である」との記述に明確に示されている。換言すると、目指しているのは、「首都平壌の力強い歩幅に全国が足並みを揃えて人民生活向上の熱風を起こす」ことである。ちなみに、ここで「社会主義万歳の声」に言及されていることも注目される。これは、最終的な狙いが既存体制の支持固めを目指したものであることを示すものといえよう。

 「首都市民の生活保障」に関する政治局会議の決定についての以上のような位置づけ(とりわけ、その2番目の)は、昨日(7月1日)の本ブログで指摘した金総理の平壌建設場現地了解における発言内容とも符合するものと考えられる。改めて繰り返すと、市民生活の全般的利便性向上のための当局者の取組み姿勢の改善に重きが置かれているということである。もちろん、その問題が提起された背景に何らかの具体的な問題が存在(ないし発生)していた可能性は排除できない。その後の対応から推測すると、住宅補修部門の機能低下、水道水の汚染、野菜供給の停滞などが考えられる。しかし、少なくとも、基本的食糧配給の長期間に及ぶ停止であったとは考え難いし、いずれにせよ、それらは契機であって、その目指すところは、巨大建造物など外見だけでなく市民の日常生活の安定・利便性向上を実現することによる、名実ともに兼備した「楽園都市」の具体化ということではないだろうか。