rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

7月2日 論説「中国に対する圧迫攻勢は失敗を免れないであろう」

 

 このところ、北朝鮮は、香港問題などをめぐり中国支持の姿勢を明確化しているといわれるが、標記論説は、最近の米中関係に対する北朝鮮の基本的な認識を示したものといえる。

 まず現状については、「最近、米国が中国を全面圧迫していることにより中米関係が前例なく悪化している」とした上で、「特に厳重なことは、米国が中国共産党が領導する中国の社会主義制度を独裁体制ときめつけて全面否定している」ことを理由として、「中米関係は単純な競争関係を抜け出て、誰が誰を(倒すか)という全面対決へと転換しており、両立することのできない制度的対決の様相を示している」との認識を示している。

 また、その延長線上で、今後の見通しについては、米国の大統領選挙を視野に入れてか、「中米対決は、米国において誰が執権するかにかかわりなく長期化しうる」との展望を示している。

 そして、最後に北朝鮮の立場について、「我が人民は、中国共産党の領導を堅持し、社会主義の獲得物を守護し、中華民族の偉大な繁栄を成し遂げるための中国人民の闘争を今後も全面的に支持するであろう」と述べている。

 論説の以上のような主張は、米中対立における「体制」の側面、すなわち、中国における、党の領導を基本とする社会主義体制を守るか否かという点を強調するものであり、北朝鮮のかねての基本的対米認識に即したものといえよう。換言すると、かねて北朝鮮が主張してきた「米帝」の社会主義を敵視し、その崩壊を目論む本質がいよいよ顕在化してきたという考え方に基づくものと考えられる。

 そのような意味で、現下の米中関係は、北朝鮮の立場からすると、必ずしも憂うべきものではなく、むしろ、経済交流などで糊塗されてきた虚飾がはげ落ち本質が露呈した、望ましい状況と映っているのではないだろうか。

 そのような北朝鮮の現状認識が今後の対米政策にどのように反映されるのか、具体的な予測は難しいが、基本的には、「情勢は我に有利」と見て、従前以上に強い姿勢で臨むことを覚悟せざるを得ないのではないだろうか。