rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2024年5月30日 金予正が談話発表、韓国への「汚物」風船散布を正当化

 朝鮮中央通信は、5月29日、「大韓民国朝鮮民主主義人民共和国人民の表現の自由を批判する資格がない」と題する金予正党副部長の談話(同日付け)を報道した。その骨子は、次のとおりである。

  • 国防省副相がすでに予告した通りに、28日の夜から韓国国境地域と縦深地域に紙くずとごみが大量散布されている」ことに対し、「韓国傀儡軍合同参謀本部は、・・国際法に明白に違反・・として即刻中断」を要求している。
  • 「自分らのビラ散布は『表現の自由』であると騒ぎ立て、それに相応した同じ我々の行動に対しては『国際法の明白な違反』であるというずうずうしい主張」は、「ずうずうしさの極みである」
  • 「糞犬もくわえない三文の値打ちもない貨幣と品物を送り込んで我が人民を甚だしく愚弄、冒瀆した韓国の連中はひどい目にあうべきである」
  • 「我々は、今後、韓国の連中がわれわれに散布するごみ量の数十倍に件当たり対応する」

 韓国報道によると、北朝鮮は、28日夜から「汚物」を運ぶ風船の韓国向け散布を開始、29日午後4時現在、韓国内各地で約260個が発見されているという。

 なお、同談話の「国防省副相の予告」とは、金強日国防省副相の5月25日付け談話において、「国境地域での頻繁なビラとごみ散布行為に対しても・・数多くの紙くずとごみが近く韓国の国境地域と縦深地域に散布されるであろう」としていたことを指すものであろう(5月26日付け本ブログ参照)。

 ちなみに、韓国からは、去る5月10日深夜、脱北者団体が仁川・江華島から北朝鮮にビラやUSBメモリーなどを積載した大型風船約20個を飛ばしたことが報じられている。

 時系列的に整理すると、そうした活動に対して、24日の政治局会議で金正恩が厳しく対抗すべきことを指示したのを受け、国防省副相が25日、予告を盛り込んだ談話を発表、28日から散布を開始、29日に金予正がこれを正当化する前述談話を発表、という流れになる。

 一方、韓国軍によると、本日午前6時14分ころ短距離弾道ミサイルらしきもの10数発が平壌付近から発射され、約350㎞飛翔して東(日本)海に落下したとのことであり、発射されたのは、超大型放射砲(KN25)と推測されている由である。

 ここからうかがえることは、韓国の風船散布への対抗措置やミサイル大量発射などが、党や軍などの実務レベルでの即時的な反発ないし発意によってではなく、そうした動向についての報告を受けた金正恩の指示(注)があって、はじめて計画・実施されているということである。端的にいえば、軍の動向はむしろ緩慢であり、いわば指導部(金正恩)の「指示待ち」姿勢が基調になっているということである。「軍の圧力による強硬措置」などというのは幻想に過ぎないことを示す貴重な事例といえよう。

注:国防省副相談話は、「我が最高軍事指導部」が「我が国家の主権に対する敵の挑発的な行動に攻勢的対応」を指示したことを明らかにしていた。