rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2020年12月9日 金与正、韓国外相・康京和の発言を非難の談話発表

 

 朝鮮中央通信は、9日、「金与正朝鮮労働党中央委員会第一副部長」の名義で、康京和韓国外相の北朝鮮のコロナ対応等に関する発言をとらえて、「妄言」「凍り付いた南北関係にさらに寒波を呼び寄せたくてたまらないようだ」などと非難する談話(8日付け)を報じた。

 ただし、同談話は、これまでのところ「労働新聞」はじめ国内向けメディアでは報じられていないという。

 同談話は、わずか4つの文からなり、非難の度合いも比較的抑制的なものであり、文面から北朝鮮がこの時期にそれを発表した背景、狙いなどをうかがうことは難しい。

 したがって、以下はまったくの憶測であるが、韓国側から北朝鮮側に対し、水面下で何らかのアプローチがあったことを受け、それに対する「回答」として出されたものでる可能性を指摘したい。

 韓国では、現在、保守勢力が「金与正の命を受けた法」と非難する対北朝鮮ビラ散布行為を禁止する法案が国会で成立間際であり、文政権としては、それを「手土産」に関係修復を模索中とも考えられる。同談話は、そうした状況(あるいは文政権の意向)を踏まえつつ、「凍り付いた南北関係」の改善を望むのであれば、政権内部の足並みをしっかりそろえる(端的に言えば、北朝鮮への恭順姿勢を徹底する)ことが先決であることを印象付けつつ、強い姿勢を示したものではないだろうか。ただ、非難のトーンは抑制的であり、韓国側の姿勢に「反省の色」がうかがえれば、しかるべき対応も可能とのメッセージもうかがえる。

 少なくとも、同談話は、北朝鮮指導部が文政権に対し、決して無視しているわけではなく、むしろ、その動向には細心の注意を払っていますよ、とのメッセージとも受け取れる。文政権では、同談話発出を受け、内心では、むしろ喜んでいるのではないだろうか。

 次の党大会で南北関係に関しいかなる方針が示されるのか注目されるところであるが、少なくとも原理的には、融和的な方向性が示される可能性もあると思われる。