rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

6月13日 金与正「談話」関連動向

 

 標記に関しては、まず、「北南関係は、既に収拾できない状況に至った」と題する張今哲(音訳)朝鮮労働党中央委員会統一戦線部長の「談話」(12日付け)が「労働新聞」紙上に掲載されている。

 同談話は、「11日、南朝鮮青瓦台がビラ散布行為と関連した立場を表明した」ことに対して、「贖罪と反省の匂いも出し、『厳重対応』意志もそれらしく見える。しかし、これは青瓦台が現危機を免れるためそれなりに頭をひねって作り出した術策ではないかとの疑念を払うことができない。しでかした思い罪の値に比して反省の態度が余りに軽いためである」「遅れて事態収拾をしたかのように騒ぎ立てるが、どこまでも言葉遊びに過ぎない拙い行いとしか見えない」などと述べ、事態収拾には不充分・不確実なものと批判している。

 その上で、「大きな事でもやるかのごとくしばしば虚言を弄するが実践は一歩も踏み出せない相手と本当にこれ以上対面したくない」として、韓国との対話に極めて消極的な姿勢を示している。

 このほかには、「挑発者を懲罰する無慈悲な報復の鉄槌」と題する「情勢論解説」及び「湧き上がる憤怒と憎悪心の噴出」と題し「各地の詩人が逆賊一味を断罪糾弾する数多くの詩作品を創作」していることを紹介(題名のみ掲載)する記事が掲載されている。

 国外関係では、「反共和国敵対行為を火語数南朝鮮当局の背信的なやり方は絶対に容認できない 総連活動家たちが主張」と題して、女性同盟委員長、商工連合会理事長、青年同盟委員長ら朝鮮総連傘下団体幹部の「声」を紹介している(細かいことだが、在日総連関係では、昨日の記事も含め、「在日本」を除いて「総連」とだけしているのは何故だろうか。「在中総連」関連記事との対比で気になる)。

 また、在中朝鮮人総連合会延辺地区協会が8日、吉林省延吉市において糾弾集会を開催したことを報じる記事も掲載された。同記事によると、同集会では、「朝鮮労働党中央委員会第一副部長の談話朗読に続いて討論発表があった」という。

 以上の報道振りから、国内では既に「抗議集会」などの活動は終息していることが確認できる。ただし、統一戦線部長の「談話」や「情勢論解説」などを掲載していることから、国内向けの宣伝活動はもう少し継続する姿勢がうかがえる。

 なお、統一戦線部長「談話」は、文政権の相当「低姿勢」ともいえる対応姿勢(それには国内外から批判が噴出している)についても不充分として受容せず、強硬対応を継続する意向を示したものといえる。そこからは、韓国側に対する更なる態度変容の期待・督励というよりは、むしろ、対話・交渉を拒否しようとの意向がうかがえる。

 要するに、北朝鮮としては、現時点では、文政権がいかに対応しようが、融和的な対応はしないと決めていると考えられる。そのような見方の根拠としては、仮に今後、文政権が更なる対応を示し、それを北朝鮮が受容するとするなら、最初の金与正「談話」の効果は不充分であったが、この統一戦線部長「談話」によって満足すべき成果が出たということになってしまうことがあげられる。それは、ありえないのではないだろうか。

 文政権としても、そのへんをしっかり見極めた上で、「目前の成果にこだわりすぎず、次代をみすえた南北政策を進めてほしい」(12日付け朝日新聞社説)と思う。