rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

6月12日 経済建設現場から軍人が撤収の動き?

 

 本日の「労働新聞」は、「三池渕市を革命の聖地らしく最上の水準でより立派に転変させよう」との共通題目の下、同地の建設に動員された「216師団」(これは軍部隊ではなく、国内各地・各機関などからの「志願者」による建設集団)傘下の各部隊の取り組みぶりを紹介する記事をいつくか掲載している。

 そのうちの「滅私服務戦で革命軍隊の本態を」と題する記事は、「軍人建設者」に関するものであるが、その中で、「三池渕市青峰高級中学校建設を受け持った部隊」について、「今年初めから不可避の事情により、施工力量の半分で工事を遂行することになった(が、工夫と努力で予定を完遂した)」との記述がある。

これは要するに、当該軍部隊が動員されていた兵力の半分を工事現場から撤収させたということを意味するものと解釈できる。同市の整備は北朝鮮にとって本年の最重点建設課題の一つであり、そこから労力を撤収させるということは、極めて重大な決定であり、当該部隊の個別の事情・判断によるものとは考えられない。仮に、同部隊にやむを得ない事情が生じたとしても(例えば、コロナ感染とか)、上級部隊などが兵力補充の措置を講じるべきであろう。それにもかかわらず、その工事が半分の力量で進められたとすれば、その背景には、政治的にそれを容認する何らかの決定があったと考えるのが自然であろう。

 この事例だけを取りあげて全体を論じることはもちろん早計であるが、先の党中央軍事委員会に関する報道でも、本ブログで指摘したとおり、恒例の軍による「経済建設への貢献」についての言及がなかったことなどを勘案すると、軍を経済建設任務から一定程度解放する流れが存在すると考えることは合理的な推測であろう。問題は、それが何のためなのかである。まさか「戦争準備」とは思えないが、やはり不気味な印象は拭えず、細心の注視が必要と考える。ここまで書いて、韓国のことわざに「『まさか』が人を殺す」というのがあるのを思い出した。