rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

3月11日 「元山カルマ海岸観光地区建設場から入ってきたニュース」

 

 標記は、「党中央委員会第7期第5回中央委員会決定を決死貫徹し社会主義強国の遠大な抱負と理想を前倒しして実現していこう」との共通タイトルの下で掲載された一連の論説・記事の一つである。それら記事の趣旨は、タイトルに示されているとおり、中央委会議決定を受けた各地の建設取組み事例などを紹介するものである。

 標記記事は、今年の3大建設目標の一つといえる元山カルマ海岸観光地区建設の状況を紹介するものであるが、注目されるのは、そこで紹介されている建設参加単位である。従前、同地区の建設は、ほとんど軍が全面的に担当していた印象が強かったのであるが、標記報道中には、「軍人建設者」という表現は出てくるものの個別の部隊名などへの言及はなく、代わりに、それ以外の様々な機関・単位から抽出されたとみられる集団の名称が列挙されている。

 まず、「人民保安省旅団」がある。その傘下に「慈江道人民保安局大隊」及び「平安北道人民保安局大隊」の名が上げられていることから、各道保安局から大隊規模の部隊を集めて編制された部隊と考えられる。

 また、「原油工業省突撃隊員たち」との言葉が出てくる。同記事中に他の省・委員会への言及はないが、原油工業省だけが突撃隊員を派出するというのは考え難いので、おそらく内閣の各省・委員会などがそれぞれ規模に応じた突撃隊を組織し、それらを統合した「中央機関旅団」ないし「大隊」が存在すると考えられる。

 次に「速度戦青年突撃隊管理局旅団」がある。これまで各地の大規模工事などを担ってきた「速度戦青年突撃隊」から一つの旅団が派遣されてきているのであろう。

 最後に「平安北道旅団と平壌市旅団をはじめとした各地の突撃隊員たち」との表現が出てくる。これは、全国の道・直轄市を単位としてそれぞれ「旅団」が組織・派遣されていることを示すものと考えられる。すべての道・直轄市から動員されているとすると10個を超える旅団が参加していることになる。

 以上を総合すると、同地の工事には、文字通り全国各地から相当大規模な動員が掛けられていることがうかがわれる。

 そこで気になるのが、これらの作業員が、これまで工事を担ってきた軍部隊に更に加えられたものなのか、あるいは、その交代要員として参加したのかという疑問である。前者であれば、目標である党創建記念日(10月10日)までの建設工事の完成を確実にするために、あるいは記事の標題にあるように、その「前倒しして実現」を目指した措置と考えられる。しかし、仮に後者であったとしたら、同地区での建設工事への動員を解除された軍部隊はどこにいったのだろうか。やや心配な動きということになろう。