rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

9月16日 被災地復旧活動続報(剣徳地域に軍部隊到着など)

 

 標記に関する本日の「労働新聞」記事の概要は、次のとおりである。

 まず、筆頭には「首都党員師団の闘争ニュース 果敢な連続攻撃戦で日々偉勲を創造」と題する記事が掲載されている。両師団の作業状況は、昨日とほぼ同様で、第1首都党員師団は、住宅建設を進めている様子が具体的に紹介されている一方、第2首都党員師団は、相変わらず苦戦を続けている模様である。

 ただ、第2師団については、傘下の諸部隊名が紹介され、平壌市内所在の各機関・企業所などを単位に組織された部隊で編成されていることが判明した。具体的には、機関を単位とした部隊としては、平壌市党委員会大隊、平壌市人民委員会大隊などがある。また、企業所を単位とした部隊としては、江東地区炭鉱連合企業所大隊、平壌火力発電連合企業所大隊、平壌市食料連合企業所大隊、タバコ連合企業所大隊、江東水力建設連合企業所大隊及び平壌326電線総合工場中隊などがある。企業の規模により、大隊又は中隊を組織しているのであろう。なお、後者の部隊は、師団直轄ではなく、まとめて「工場連隊」の傘下におかれているとみられる。一方、第1師団傘下の部隊名は、これまでのところ、すべて地名(地域又は郡)が付されていることから、市内の行政単位に基づき組織されていると考えられる。

 それ以外の災害復旧への取組みに関しては、「被害地域人民達により良い幸福の安息地を整えるとの燃える一念を抱いて」との共通題目に下、各地の状況が報じられている。

 その中で最大のニュースは、「剣徳地区の臨時道路工事に進入」と題し、同地区への軍部隊到着を報じる記事である。想像したとおり交通路が遮断され、山を越え川を超える難行軍の末、ようやく到着したとされるが、その日付は示されていない。昨日まで報道がなかったことから、おそらく15日早くても14日であろう。「8日午前」に開催されたとされる中央軍事委員会での派遣決定から、6~7日かかったことになる。到着部隊が最初に取り組んだのは、端川市からの同地区までの「数十㎞区間の臨時道路建設」であり、これは「剣徳地区の被害復旧を促進する上で鍵となる意義を持つ重要な工事」であるという。ただ、現在までのところ、「掘削機、大型シャベル・カーをはじめとする重機械と輪転機材を利用できない条件」にあることから、それ以外の取組みは、「危険個所の岩を除去する作業と(建材用)石の採取作業」などにとどまっており、本格的な復旧作業の開始にはなお時間を要するであろう。

 また、「工事速度と質を皆同じく重視して」と題する記事は、「(江原道)鉄原郡被害復旧に奮い立った元山カルマ海岸観光地区建設社会安全省旅団」の活動を紹介している。元山カルマ海岸観光地区建設については、完工期限を過ぎても一向に関連報道がなく、どうなっているのか関心をもっていたのだが、少なくとも、建設部隊は残されていたようで、それが今次台風を契機に同地の復旧に転用されたのであろう。ちなみに、同旅団を構成する部隊名としては、「社会安全軍呉英守(音訳)所属部隊」と平壌市、平安南道黄海南道咸鏡南道南浦市、慈江道、平安北道の各「安全局大隊」が報じられている。社会安全軍についてはある部隊をまるごと派遣し、各道及び直轄市の(社会)安全局(警察組織)からは隊員を選抜して大隊を組織して、同旅団を編成したものと考えられる。ただ、これまでカルマ観光地区建設に従事していたのが同旅団だけなのか、あるいは他の部隊も参加していたのか判然としない。

 更に、「被害復旧に必要な資材を最優先的に」との共通題目の下で、鉄鋼材、セメントなどの必要資材の送付や通信施設、送配電施設の復旧などへの取組みも紹介されている。

 このほか、このような復旧活動が民心に及ぼす影響を紹介するものとして、「『我々の元帥様が送って下さった党中央委員会勤務員たちが来た!』 渾然一体の感動深い画幅が広げられた黄海南道台風被害地域人民達の激情あふれる声を聴いて」と題する記事がある。これは、金正恩の指示により党中央委員会勤務員が黄海南道の被災地に動員された際の地元住民との交流を称賛するもので、そのような活動の結果について、「暗黒な試練の中で、人民たちも勤務員たちも皆同じく成長し、我が祖国の不敗の力である党と人民の混然一体、偉大な一心団結はより固く確かめられた」と称賛している。実情はともかく、金正恩の指示の狙いは、このようなところにあったのであろう。冒頭に述べた首都党員師団の編成・派遣についても、同様のことがいえるのではないだろうか。