rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

9月15日 被災地復旧活動続報

 

 別項に記載した金正恩の現地指導を除く被災地復旧に関する報道内容を簡略に紹介したい。

 まず、金徳訓総理が「東部地区の被害復旧状況を現地了解」したことが報じられている(日時記載はなし)。「東部地区」とは、どこかと思ったのだが、記事本文では、「咸鏡南道咸鏡北道の被害復旧現場」及び「江原道通川郡と文川市、唱道郡、金剛郡」が上げられていた。なお、ここでも、本文中を含めて「指導」の表現はなく、旧来通りの「現地了解」が用いられている。

 次に、「被害復旧戦区ごとで不屈の精神力と気概を余すところなく誇示しよう」との共通題目の下、「立体戦、速度戦の火風の中で住宅骨組みが競争的に立ち上がる 第1首都党員師団において」と「不利な条件を頑強に克服して 第2首都党員師団において」及び「新たな偉勲を創造する気勢高く 銀波郡大青里一帯の被害復旧戦闘に参加した朝鮮人民軍廉哲守所属部隊において」と題する記事が掲載されている。

 このうち、2番目の咸鏡北道に派遣された第2首都党員師団に関する記事では、「不利な道路状態のため工事資材が到着できない条件に即して、住宅建設の先行作業である砂と玉砂利の採取に取り組んだ」としており、それと「地帯整理」(更地に造成のことか)を超える具体的な成果の紹介がないことなどから、同地での復旧作業の停滞がうかがわれる。一方、第1首都党員師団に関しては、個別の大隊ごとの具体的な成果が紹介されているほか、別に「首都党員師団の進軍歩幅に歩みを合わせて 咸鏡南道において」との記事もあることから、作業は比較的順調に進捗してるとみられる。

 また、これら取り組みの意義について、「被害復旧戦闘は重要な政治事業」と題する論説は、「被害復旧戦闘は、我が党と国家存立の礎石である一心団結をくまなく固めるための政治的事業である」と主張し、「党の構想と意図のとおりに被害復旧戦闘を最短期間内に最上の水準で結束してこそ我が党の領導力と戦闘力を誇示し絶対的権威を擁衛することができる」と述べて、「党」すなわち金正恩の権威と直結するものと位置付けている。

 同論説は、あわせて、今次復旧作業を単なる復旧に留めることなく、「人民の要求と志向、時代的水準に即して、遠い将来にも実用的でありながら美学的にも遜色なく立派に」仕上げることも求めている。これは、金正恩が災害視察などに際し(本日視察が報じられた金川郡江北里の再建に関しても)主張してきたところであり、その意を代弁したものといえよう。

 別稿で紹介した金正恩の度重なる被災地視察に加え、こういった主張からも、今次の連続自然災害を同人の権威向上、求心力強化の契機として活用しようとの強い意向が改めてうかがわれる。

 なお、先の中央軍事委員会(9月8日)での決定に基づき剣徳地区に派遣されたはずの人民軍部隊については、これまでのところ現地に到着したとの報道がない(見落としがなければ)。咸鏡北道同様あるいはそれ以上に交通が遮断され進出が難航しているのであろうか。