rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

9月15日 金正恩が被害復旧を終えた黄海北道金川郡江北里を現地指導

 

 金正恩の被災地への「現地指導」状況が、銀波郡大青里への現地指導が12日に報じられて以来3日ぶりに報じられた(訪問日の記載はなし)。大青里はいまだ復旧建設の途上であったが、今回報道の江北里は、既に復旧作業が完成し、「自然の大災害の痕跡をきれいに消し去り、社会主義仙境、社会主義農村の模範村として立派に建設された」とされる。

 同地の復旧工事については、金正恩が同地の被災状況及びもともと災害に脆弱な状況にあることを聞いて、「里所在地の建物を全部撤去し、新たに建設して里の様相を一新させることについての戦闘命令」を下したことを受けて行われたものと報じられており、早期完成を顕彰する意味もあって訪問したのであろう。

 そのためもあってか、今次「現地指導」報道で最も注目されるのは、同地にとどまらず全国各地で被害復旧に従事している軍の活動に対して、金正恩が強い称賛の辞を繰り返していることである。すなわち、「最近、国の各地域に展開した災害復旧戦線ごとに主力となっている我が軍人たちが発揮している英雄的な闘争の報せに毎日のように接するたびにすべての人民軍将兵たちが帯びている尽きることを知らない無限大の精神力と熱烈な愛国心、党と人民に対する限りない忠孝心を胸に熱く感じ、彼らの献身と苦労の前に頭が下がる」「国と人民、自分の党と革命偉業にかくも忠実な強い革命軍隊を持っていることは、我が党と国家の自慢の中で一番大きな自慢であり、金正恩が帯びている最も大きな福である」などと述べたことが報じられている。

 俗に「苦しい時の神頼み」というが、北朝鮮の場合は、「苦しい時の軍頼み」ということか。「苦難の行軍」時代を経て「先軍」が叫ばれたことを彷彿させる言辞である。今後、軍内では、これを最大限活用して、「このような過分のお言葉を下さった御恩と信頼に報いよう」との宣伝活動が展開されるのであろう。

 もう一つ注目されるのは、同地の建設状況なども踏まえて、金正恩が「我々の農村を現代的技術を有した富裕で文化的な社会主義農村として転変させるための責任ある重要な事業に国家的な資源を大幅に増強させるべきと強調」し、「(次の)我が党大会がこの重大な問題に正確な解答を下すであろう」と述べたとされるのだが、その前に「同行した党と政府の幹部たちと共に農村建設において我が党が恒久的に堅持していくべき方向について討議された」とされていることである。

 ちなみに、同行が報じられたのは、崔竜海最高人民会議常任委員長、朴奉柱党副委員長、金才竜党副委員長、朴正天軍総参謀長、李日愌党副委員長・宣伝扇動部長、趙勇元組織指導部第一副部長、金勇帥党財政経理部長、朴太成、玄松月宣伝扇動部副部長である(朴太成については、従前、政治局委員・党副委員長とされてきたが、この報道順からみると、その地位からは陥落し、党の部長クラスに就いているとみられる)。このメンバーが前述のようなテーマを「討議」するに充分であるかと言えば疑問であり(内閣のメンバーを欠いている)、「討議された」といのは修辞に近いと思われるが、そのような表現を敢えて用いていることの意味は、とりわけ最近の「委任統治」論ないしその根拠とされている様々な事象とも一脈通じるところがあり、更なる検討に値するものであろう。ここでは、そのことの指摘にとどめておきたい。