rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年11月16日 金正恩が三池淵市を現地指導

 

 本日の「労働新聞」は、標記現地指導を報じる記事を掲載した。現地指導の日付は例によって報じられていない。

 まず、随行者は、趙勇元秘書、金徳訓総理、朴正天秘書、金在龍組織指導部長、朴勲副総理及び「建設部門幹部」である。

 今次指導の趣旨及び対象は、「革命の聖地らしく山間文化都市の立派な標準、理想的な模範地方都市として転変させようとの金正恩同志の精力的な領導により3段階に分けて全党的、全国家的な事業として力強く推進されてきた三池淵市建設事業が今年で締めくくられることになる」のに即して、「第3段階として建設された白頭山密営洞地区、李明洙洞地区、布泰洞地区の住宅と教育施設、文化厚生施設、踏査宿所と中興農場をはじめとした市内の諸対象を現地指導した」としている。

 金正恩は、視察結果、「すべての建設対象が我が党の主体的建築美学思想と地方建設に関する方針的要求に合って自然環境と地域の固有の特性がよく生かされ、実用性、多様性と造形化、芸術化が徹底して具現されているとして高く評価」し、「党の決定と政策を輝かしい現実として具現した三池淵市建設者と支援者と全国の人民に党中央委員会の名前で感謝を送った」という。

 また、今後の課題として、「三池淵市建設で蓄積した優秀な経験を積極的に奨励し拡大させ、地方建設発展と文明的な全社会建設を進める転換的局面を開かなければならない」とした上で、「地方の建設力量と設計力量を急速に強化し、物質技術的土台をしっかりと整備することが現時期、最も切迫して提起される先決的問題、戦略的課題」であると指摘したとされる。

 以上の現地指導報道は、金正恩の出現報道が1月以上途絶えていた後の久々の出現報道である。ちょっと考えすぎかもしれないが、金正恩は、何故、近いうちに迎えるであろう工事完工をまたずこの時期に三池淵市に行ったのか、とりあえず健在ぶりと建設成果を誇示する場所としては、ここしかなかったからとも考えられる。

 新5か年計画の初年度課題完遂のために指導・督励すべき場所はほかにあるように思えるのだが、金正恩が指導して、成果が出せないとなると格好がつかないので、完工の目途がついている三池淵市を選んだのかもしれない。このところの成果報道を見ていると、人力と建材さえ動員すれば完成できる建築物や土木工事や技術的には難度が低そうな食料工場などが大半を占めており、技術的難度を要求される基幹産業の施設などでは見るべき成果がほとんどないようにも思える。