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主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年3月24日 平壌市内1万世帯住宅建設着工式開催、金正恩が出席、演説

 

 本日の「労働新聞」は、3月24日、市内寺洞区域で開催された標記着工式の状況を伝えるとともにそこで行った金正恩の演説文を掲載している。

 着工式では、金正恩の演説に続き、同人が「平壌市内5万世帯住宅建設指揮部旗」を同指揮部メンバーに授与し、これを受けた金正官国防相(次帥)が「建設者を代表して決意を確認した」のち、「着工を知らせる発破が行われた」という(添付写真には着工式後方に大きな土煙が立ち上る光景あり)。

 金正恩の演説では、同建設工事に関し「首都の住宅不足世帯数を掌握し、その解決対策を深く研究」した結果に基づくもので、「党と政府において最重大課題」であるとして、その重要性を強調した。また、「国家建設総予算の多くの部分が住宅建設に支出されるようにした」ことを明らかにした上で、「(このような)大規模の住宅建設作戦は、いかなる経済的利得のためでもなく、徹頭徹尾、国家の財富と勤労大衆の創造的労働の結果がそのまま勤労大衆自身の福利となるようにする崇高な事業」であるなどとして、住民福利への腐心を強調している。

 さらに、同工事の困難性について、「事実、挑戦と障害がいつよりも厳しい今のような状況でこのような大規模建設を行うこと自体が想像外の破格のこと」と自認しつつ、「無条件的に推進することにした」との取り組み決意を述べている。

 また、実際の工事担当者としては、「第一に信じるのは言うまでもなく党と人民に限りなく忠実な革命武力」であるとして人民軍を主軸として挙げるとともに、「首都建設委員会と速度戦青年突撃隊、革命史跡地建設局、対外建設局をはじめとした社会の主要建設部隊もこのたびの大建設戦闘に参加」するとして、建設力量を総動員する方針を示している。

 加えて、工事の施工推進に関しては、「施行の質を高めることを主たる課題として打ち立て、建設作業の全工程を質保障で一貫」させるよう求めるとともに、「(工事に)必要な資材と設備を最優先的に適時の保障」すること、「建設に参加した軍人と建設者の健康と生活をしっかりと面倒見ることを最大限重視」することなども訴えている。

 同建設工事は、先の党大会で金正恩が打ち出した5年間で平壌市内に5万世帯分の住宅を建設するとの方針を受け、2月の党中央委員会全員会議で年内の1万世帯分建設が決定されたことに基づくもので、金正恩の肝いりのプロジェクトといえる。

 その狙いは、上記演説にも示されているとおり「人民大衆第一主義」の目に見える結果を印象的な形で誇示することであろう。

 しかし、昨年、同様の狙いで年内完成を公言して着工した平壌総合病院はじめ、元山カルマ海岸観光地区や三池淵市整備第3段階工事など、かつて金正恩の肝いりで国家プロジェクトとして取り組まれていた諸工事が未完成のまま残されている中で、このような大工事を新たに開始することが本当に妥当なのか、疑問を呈さざるを得ない。