rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年3月23日 論説「現段階での我が党の経済戦略は整備戦略、補強戦略」

 

 標記論説は、「朝鮮労働党第8回大会の文献を深く学習しよう」との副題を付して掲載されたもので、先の党大会において、新たな「5か年計画」の基調として打ち出された「整備戦略、補強戦略」の必要性及び実践に向けた課題などについて解説したものである。

 まず、その必要性については、二つの理由を挙げている。第一は、「元来、部分的な整備と補強は経済建設過程で日常的に行う」べきこととの前提の下、「特に新たな発展段階を志向する段階」では「経済全般を整備補強すること」が重要な課題となるとの理由である。換言すると、「経済を新たな発展段階に昇り立たせようとするなら、必ずすべての部門と単位の能力が十分に発揮できるように(するための)整理整頓事業を全面的に行うことが必要である」との主張である。

 第二の理由は、「醸成された対内外形勢下で我々の経済をいかなる外部的影響にも揺さぶられることなく円滑に運営される正常軌道に乗せることのできる方途」であるということである。要するに、経済制裁ないしコロナ防疫措置などの影響を緩和するために必須ということであろう。

 その上で、実践に向けた課題については、「(これら)戦略貫徹において先行させるべき問題は、経済事業を指導し管理する体系と方法を改善すること」と主張する。なかでも、「経済事業と関連した問題は、徹底して内閣に集中させる規律を厳守し、内閣の主導的役割を強化」することが必要であり、「鍵となるのは計画課事業体系と方法を革新すること」であるとして、「国家計画委員会をはじめとした計画機関」や「統計の機能と役割」などの重要性を強調している。

 もう一つの課題として主張されるのは、「国家経済の命脈を高く立たせるための事業を正しく組織展開すること」である。ここでは、まず、「国の全般的経済発展に決定的影響を及ぼす金属と化学、電力工業部門」に対して、「生産と経営活動上必要な条件を保障するための作戦を綿密に立て、強力に推進する」ことが主張されている。あわせて、「全人民経済的範囲で経済効率性を高めることができるよう生産力を合理的に再配置する事業」や「経済の均衡的発展に切実(に必要)な部門を補強」することなどがあげられている。

 以上の内容から改めて確認できることは、新「5か年計画」が経済の量的拡大を目指すというよりは、そのために基礎固め、体制固めないし問題点の是正や弱点の補強などを中心的な課題としているということであろう。

 そして、その方向性は、国家全体としての自立性、効率性を志向するものであり、そのためにも、内閣を中心とした統一的指導・計画に基づいて推進されることが求められているのであろう。

 なお、経済建設の最重点部門としては、従前、金属・化学の両部門があげられていたが、ここでは、それに電力工業(発電)部門を加えた3部門が併記されている。今後、恒久的にそのような格付けになるのか、様子をみたい。