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主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年1月29日 評論「節約型構造へと転換する上で提起される要求」

 

 前項のブログで「自力更生」に関する論説を紹介したが、新「5カ年計画」を特徴付ける概念として「自力更生」と並んで注目されるのが「整備戦略、補強戦略」との表現である。

 標記評論は、「生産土台の整備補強を重要な戦略として堅持し実質的に推し進めよう」との共通題目の下で掲載されたものであり、「整備補強」の方向性をうかがわせるものと考えられる。

 そして、そこで求められているのは、「生産工程を労力節約型、エネルギー節約型、敷地節約型へと確固として転換させる」ことである。

 同評論は、「一部の単位の実態を見ると、いまだに過大容量設備が残っており、設備が不必要に広い敷地を占めており、労力浪費を招来する要素も少なくない」と指摘した上で、「このような不合理な生産工程を節約型に整備補強すれば、同じ条件で大きな実利を得ることができる」として、そのための課題を挙げている。

 まず、「重要な問題は、国家的立場に立って、この事業を大胆に大きく展開していくことである」と主張し、とりわけ幹部が目先の困難に躊躇することなく、国家的・長期的眼目に基づき、積極的にこの問題に取り組むよう促している。

 また、「次に、この問題を(生産者)大衆自身の事業として確固として転換させること」が必要であるとし、そのために「政治事業(宣伝教育活動)を強化し、・・・創造的積極性を高く発揚させる」よう求めている。

 ここでも、個別企業の目先の利益よりも国家的・長期的利益を重視すべきことが強調されており、前項の本ブログで指摘した国家主導型経済管理への志向がうかがえる。企業に求められる「創造性」の発揮は、本評論の文脈で言えば、「節約型」への転換を大前提とした上で、その具体的方法に関する範囲に限定されているのではないだろうか。

 なお、先般の本ブログで、「整備戦略、補強戦略」について、「自力更生」を可能にする経済構造への再編成を目指すものと推測したが、本評論を見る限りでは、それが直接の目標になっているわけではないようなので、訂正しておきたい。むしろ、両者を車の両輪のように進めていこうという考え方であるのかもしれない。この点については、もう少し慎重な検討が必要なようである。