rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

8月2日 論説「経済建設において堅持すべき重要な原則」

 

 標記論説は、「自力更生」「自給自足」路線について論じたもので、まず総論的に「(その)基本は、国家的範囲において経済事業を組織し活性化し、経済発展と人民生活向上に必要なものは最大限国内において生産保障すること」と意義付けた上で、その実現のための重要課題として次の2点をあげている。

 まず、「自らの技術と力量に徹底的に依拠し経済全般を再整備」することである。その背景には、「他人の協力や助けは限界があり必ず代価を払うことになる。自分の人民の無窮無尽の力に依拠してこそ速くてかつ持続的な発展を成し遂げることができる」との考え方がある。

 次に、「自らの原料、資材に徹底して依拠」することである。何故なら「原料、資材を輸入に依存するなら、そのような経済は他人に喉元を掴まれた隷属経済であり、決して自立的経済であるといえない」からである。

 論説は、結論として、「自力更生は、我が国家と人民が永遠に堅持していくべき戦略的路線である。・・我々において、自力更生の外にいかなる別の選択もありえない」として、同路線の堅持を強調している。

 同論説の以上のような主張は、従前から繰り返されているもので何ら新味のあるものではない。しかし、それを敢えてこの時期に繰り返したことの意味を考えると、あるいは考えすぎかもしれないが、韓国・文政権が先の北朝鮮の激しい対韓批判キャンペーンにもかかわらず、新たな陣容の下、北朝鮮への交流促進に一層拍車を掛けているとの状況を踏まえたもの(それに対する国内の意思統一を図ったもの)とみることはできないだろうか。

 北朝鮮としては、韓国からの経済的支援への期待は当然持っているであろうが、同論説で示されたような原則に基づくなら、それが「南北経済の一体化」すなわち北朝鮮経済の韓国経済への組み入れにつながるようなものであるとするなら受け入れることはできないということになる。そのような意味からすると、同論文は、韓国の経済支援の在り方に一種の注文を付けたものとみることもできるのではないだろうか。

 更に言うと、文大統領の主唱する「平和経済体制」といった構想が具体的にどのようなものか承知していないが、このような北朝鮮の「自立経済」志向を尊重したものでない限り、「独り相撲」に終わってしまう公算が高いと考える。