rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

5月5日 論説「我々式に生き闘争するところに社会主義勝利がある」

 

 標記論説は、まず題名を敷衍するかのごとく、「我々式に生き発展するここに、国と民族の自主的尊厳があり、強盛繁栄がある」「我々式に生きていくということは、自分の精神を持ち思考し、我が人民の利益と我が国の実情に合うよう革命と建設をしていくということを意味する」と解説する。

 その上で、「我々式に生き闘争すること」の意義・効用について、次の2点を主張する。

 第一は、「主体の社会主義を擁護固守するための必須的要求である」ことである。その根拠として挙げられるのが歴史的経緯である。すなわち、「万一、我々が外勢の強権と圧力に屈服して自主的立場を放棄していたなら、主体の社会主義は地球上に生まれることができなかったであろうし、世界社会主義体系の崩壊と共に我々の国号も輝きを失っていたであろう」という。これは、金日成が主体性を打ち出さずソ連の衛星国になっていたら、その崩壊と共に北朝鮮も東欧共産主義国と同様の運命をたどっていたであろうという意味で、確かにそのとおりであろう(ただし、それが人々にとって幸いであったか否かは別問題と言いたいが)。その上で、今後の選択について「モデル」という表現を用いて、次のように主張する。

 「他国の技術と資金に頼っている経済、下請け経済は風の前のロウソクの火と同じである。いかに輝くような経済実体であっても尊厳を守ることができず将来に期待できない経済は学び従うべきモデルではなく、警戒すべきモデルである。帝国主義者どもが改革、開放を宣伝するのは、我々の針路を変更させ、我々の社会主義制度を失わせようとすることにその目的がある。」 

 第二は、「社会主義の優越性と威力をより高く発揚する重要な担保である」ことである。そして、そこでは、「我々の発展方式は自力更生である。我が国家と人民の尊厳と偉大さは、徹頭徹尾、自力更生して強くなることにある」として、「自力更生」路線の必要性が主張される。とりわけ、敵対勢力の圧迫策動が強まる中では「社会主義強国を打ち立てることができる唯一の近道はただこの道(=自力更生)だけである。我々式が第一であり、我々の力が第一である」ことを強調して結びとしている。

 以上の主張は、基本的に従前の繰り返しといえるが、その中で注目されるのは、警戒すべき「モデル」とされているのがどこの国を指すのかということである。韓国のようにも見えるが、中国を念頭に置いているようにも思える。その前段の「主体性」の強調などを踏まえると、中国モデルの拒否を意味している可能性の方が高いのではないか。

 そうであれば、それなりに重みを持った決意表明とみるべきであろう。もちろん、同旨の主張は、これまでにも繰り返されている。それだけ北朝鮮国内に「中国モデル」待望論が潜在していることの反映であろうか。あるいは自国「モデル」を押し付けようとする中国の圧力があって、それへの反発がこのような形で表現されているのであろうか。そういった葛藤の有無は、中朝関係をみる上での一つのポイントでもあろう。

 もう一つ注目されるのは、「尊厳」という言葉が繰り返されていることである。以前にも指摘したところだが、それへの執着を軽視しては、北朝鮮の行動原理を理解できないのではないかと思う。