rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2月21日 論説「我々の国家と人民の尊厳と偉大さは自力更生にある」

 

 またもや「自力更生」の正当性を主張する論説であるが、これは、「尊厳と偉大さ」を根拠にしているところに新味がある。このような論法は、「尊厳」に対する強い欲求が、北朝鮮を理解する上で(あるいは韓国もそうかもしれないが)、非常に重要な要素であることを改めて感じさせるものともいえる。

 論説は、何故、自力更生が「尊厳と偉大さ」の根拠となるのかを二つの側面から主張している。

 第一の根拠は、「自力更生は、まず、我が人民を強大国公民としてくれる原動力である」からである。すなわち、北朝鮮の自国に対する現状認識は、「自力更生」の結果として、「民族自主、民族自存を生命線として打ち立て、頑強に実践して生きた我が国家は、世界政治構図の中心に堂々と昇り立った。1世紀前だけでも事大と亡国を宿命のように甘受しなければならなかった弱小民族が今日は誰も敢えて手出しできない強国人民として急浮上した」というものである。つまり、少なくとも「尊厳」という視点からするなら、「自力更生」によってもたらされた現状は満足すべき状況にあるということになる。

 第二の根拠は、「自力更生は、また、我が国家の戦略的地位と発展上昇を不可逆的なものにする最強の宝剣である」からである。何故なら、「尊厳を手に入れることも大変だが、それを守り輝かすことはより難しいこと」である中、「敵対勢力どもの凶心が明々白々になっている今、(自力以外の)何かに期待をかけることは即、自滅の道である」からである。「自力富強、自力繁栄の旗幟がより力強く翻ってこそ、社会主義勝利の前進活路が開かれる」との主張である。なお、「敵ども」との関係でいうと、「自体の力を強化し、自力で自分の前途を開拓していく強者を敵どもは一番怖がり、絶対に傷つけることができない」と主張している。これを換言すると、自力更生に努め、自衛の努力を怠らなければ、敵の攻撃はありえないということになる。「反共和国侵略策動」とかを常々批判している中で、実際の認識は、比較的楽観的ともいえよう。

 論説は、最後に、「すべての幹部と党員と勤労者」に対して「自力更生に我々の尊厳と偉大さがあり、燦爛たる未来があるとの真理を心臓深く刻みつけ」ることを求めている。

 同論説からは、過去の屈辱的歴史への反動でもたらされる自国の「尊厳」「偉大さ」に対する強い願望をてことして、「自力更生」に対する社会各層からの支持を確保しようとの狙いがうかがわれる。こういった論法は、南北を問わず朝鮮半島に住む人々に対して、それなりの説得力を発揮できるように思うのだが、どうだろうか。