rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

9月29日 論説「偉大な党の懐の中で花咲く我が人民の価値高い命」

 

 標記論説は、人民が「党の懐」に抱かれていることが何故ありがたいことなのかを説明するもの。

 第一は、「党の懐は、我が人民に尊厳高い命を抱かせてくれる」ことである。なぜなら「人民において尊厳高い命は、政治的生命を帯びて自主的権利を堂々と行使し、まっとうに生きる命である」からである。

 第二は、「党の懐は、我が人民に幸福な命を抱かせてくれる」ことである。その根拠となるのは、「今、我が人民の生活はさほど満ち足りたものではない」が、人民は、「最悪の条件の中でも人民の福利増進を自己の活動の最高原則とし・・専心全力する我が党に対する絶対的な魅惑」を抱いており、「我が党の精力的な領導において人民はより良い明日、より明るい未来を確信している」ことである。

 第三は、「党の懐は、我が人民にやりがいに満ちた命を抱かせてくれる」ことである。「命の価値とやりがいは、社会と集団にどれだけ貢献するかによって評価される」からである。

 論説は、以上を踏まえて最後に「真の命と幸福を抱かせてくれ、輝かせてくれる偉大な母なる党の懐に抱かれることは我が人民が受ける最上最大の特典であり幸運である」と強調している。

 以上のような主張からは、北朝鮮指導部が人々に対し「党の懐」に抱かれること、すなわち既存体制の統治に服することの正当性の根拠として、いま挙げることができるのは、現時点における物質的恵沢(安定した生活)の提供ではなく、人々に自らの社会への貢献というやりがい(=政治的生命)を感じる機会を提供することと将来の希望(に向けて努力しているという姿勢)を示すことしかないことをうかがうことができる。

 このような主張は、とりわけ党創建75周年記念日を前にした今、自然災害ないし経済不振などの困難を払しょくできない中で、人々に評価の基準を物質的価値から精神的価値へと転換するよう改めて促すことによって、75年間の「成果」を実感させるための準備作業とも考えられる。