rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年4月1日 金正恩が普通江地区住宅建設地を再度視察

 

 本日の「労働新聞」は、3月26日付け同紙で金正恩の視察を報じた標記建設が本格的に開始されたことを伝えるとともに、金正恩が党幹部らを帯同して同地を再度視察したことを報じる記事を掲載した。

 同記事によると、金正恩は、「本格的な建設戦闘に進入するため現場に入った施工単位の展開状況を視察し、施工分担区域を了解」したという。そして、「核心建設単位(複数)が対象建設を受け持ったので、自らも常に関心を持って直接工事に対する組織指導事業を強化する」との決意を述べ、「工程計画を綿密に立て、建設組織(作戦の意)と指揮を隙間なく行い、設備と資材保障を徹底して実践して、単位別政治(思想教育の意)事業と競争組織事業を奨励して速度戦、実力戦で都市住宅建設の模範的経験を創造」するよう訴えたという。

 なお、記事には、21枚もの写真が付されているが、そのうち現場での金正恩らの姿を映したものは5枚だけで、残りの16枚は、建築予定の各種住宅や同地区の完成予想図であった。

 最近の「労働新聞」は、1万戸建設関連の記事を連日掲載し、建設工事の進捗状況のみならず、そこへの資材等供給に取り組む各部門の状況などを紹介しているが、金正恩は、この800戸住宅建設に一層の関心を払っているようにみえる。記事に示されているように彼が直接、進捗状況を掌握・指導すれば、同所の建設工事は間違いなく順調に進むであろう。しかし、その結果として、他の部門が受けるしわ寄せは、それだけ深刻になるのではないだろうか。

 そもそも、1万戸建設自体が、「整備・補強」を基本戦略とするはずの5か年計画全体の中で、突出した存在であったように思える。それに加えて、同プロジェクトとは別枠でこの「江岸住宅地区」建設を優先的に推進することの経済全般に及ぼす副作用は、無視できないものがあると思われる。

 ちなみに、本日は、今年の第1四半期における経済各部門の目標達成状況を報じる記事(「党第8回大会決定貫徹に沸き立つ戦闘場から入ってきた知らせ 人民経済諸部門において新たな5か年計画の初年1・4分期計画完遂」)も掲載されている。

 同記事は、「金属工業部門の諸単位」が「1・4分期計画を完遂」、「化学工業部門の諸生産単位で1・4分期に遂行すべき窒素肥料、ビナロン、塩化ビニール、苛性ソーダ、塩生産計画を完遂」、「電力工業部門の諸単位」が「1・4分期電力生産計画を完遂」、「石炭工業部門の諸単位で1・4分期石炭生産計画を遂行」したとして、それぞれの部門で成果を上げた企業所などを紹介している。これを逆からみると、いずれの部門も、部門全体としては、目標が達成できていないことを物語っていることになるのではないだろうか。

 5か年計画そしてその初年度である今年の経済計画は、滑り出しから厳しい状況にあると考えられる。もっとも、金正恩は、そういった状況は十分承知の上で、あえて、困難な課題を提起しているのかもしれない。そのことは、例えば、本日掲載の「政論」(「歳月を縮めて走ろう」)が「最も困難な時期に最も巨大な奇跡を最高の速度で!」と呼び掛けていることなどからもうかがうことができよう。ただ、それが本当に可能なのか、にわかに予見しがたいものがある。