rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年10月6日 内閣全員会議拡大会議の開催を報道

 本日の「労働新聞」は、標記会議が10月5日、金徳訓総理の「指導」の下、「画像会議」で開催されたことを報じる朝鮮中央通信の記事を掲載した。その骨子は、次のとおりである。

  • 主な討議内容:「3・4分期人民経済計画遂行状況が総括され、今年の人民経済計画を輝かしく完遂する上で提起される対策的問題(複数)が討議」
  • 「報告」(楊乗浩副総理)の主要点:「3・4分期間、人民経済すべての部門と単位で・・生産闘争、創造闘争を力強く展開し、貴重な成果を収めた」、「機械工業部門と化学工業部門、電力工業部門をはじめとした人民経済主要部門において生産的昂揚が起き、華城地区2段階1万世帯住宅建設と西浦地区新街区建設、江東温室農場建設などの主要対象建設において新たな奇跡と革新が創造された」、「3・4分期人民経済計画遂行において現れた一部単位の欠陥と偏向が資料的に分析総括された
  • 「討論」(複数、氏名記載なし):「(3・4)分期間に現れた深刻な偏向と弊害、欠陥と教訓について言及し、非常な覚悟と奮発力により年末締めくくりのための闘争において託された責任と本分を尽くしていく決意を披歴」
  • その他強調・対策事項:「整備補強戦略遂行、育児政策、国土管理、生態環境保護」、「農業部門で農機械の稼働率を最大に高め、営農作戦と指揮を周到精密に行い、穀物生産目標を無条件に遂行」

 内閣全員会議拡大会議は、4半期ごとの開催が恒例化しており、以上のような今次会議の内容も、従前と同様であり特段の新味はうかがえない。成果とされた点、今後の重要課題とされた点など、いずれも想定の範囲内といえる。

 ただし、今次会議が金正恩による8月21日の浸水被害地視察に際しての「金徳訓内閣」に対する厳しい批判公開後開催されるはじめての内閣全員会議であることを勘案すると、そうした批判に対する内閣としての「自己批判」姿勢が示されても当然とも思われ、それがなかったことが逆に注目すべきこととも考えられる。

 もちろん、今次会議において、自己批判を意味する表現はあるにはある(下線部)。しかし、例えば前回の7月5日開催の内閣全員会議に際しても、「報告」において「経済事業で現れた一部偏向と原因を分析評価」した上で、「幹部が託された事業を革命的に展開できなければ国の経済発展と人民生活向上において前進を成し遂げることはできない」として幹部の責任ある「観点と立場」及び「主導性、創造性、活動性」発揮などを訴え、「討論」において「自分たちの事業を深刻に分析総括」したと報じられている。両者を比較すると、今次会議において、そうした批判が従前よりも特段徹底して行われた跡は認められない。

 金正恩による批判をまったく無視したともいえるこうした対応が何を意味するのか、表面的には絶対的とも見える同人の指導力の実相を見極める上でも、真剣に検討すべき問題であると考える。