rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年10月4日 人民経済諸部門の9月計画遂行状況を報道

 

 本日の「労働新聞」は、「9月人民経済計画を完遂した気勢で継続革新、継続前進 人民経済諸部門と単位において」と題する記事を掲載した。

 実際の記事内容を見ると、標題とは裏腹に「9月人民経済計画完遂」が明記されているのは特定の企業所だけであり、その余の大半の部門・単位については、計画遂行状況についての直接的記述がなく抽象的な記載にとどまっている。こうした報道ぶりは、毎月初めに掲載の前月経済計画遂行状況のとりまとめ記事に恒例のものといえる。

 具体的には、冒頭に紹介の千里馬製鋼連合企業所で「9月人民経済計画を完遂した気勢高く10月にも鉄鋼材生産と整備補強事業で前進を成し遂げている」としているのを例外として、その他は、「(化学部門では)2・8ビナロン連合企業所をはじめとした諸単位でも・・9月に続き10月にも高い生産実績を記録している」、「国の動力基地(発電部門)において増産の槌音が高く轟いている」、「石炭工業部門において増産運動がより高潮している」、「各地セメント生産単位においても革新を創造している」などの表現にとどまっている。

 こうした表現ぶりからは、工業部門では相変わらずの苦戦が続いているとの観測が可能であろう。そのことは、本日掲載に社説「必勝の信念と勇気を百倍にし、今年の闘争目標占領に総奮起しよう」の記述からもうかがわれるところである。

 同社説は、「今年の闘争目標(=経済計画)の成果的占領、これは非常に強化された我が国家の尊厳と位相をより力強く轟かすための重大な事業である」としつつも、「条件と環境に囚われていれば、使命と責任が押し流されてしまうことになり、いつになっても強国の夢と理想を実現することができない」と述べて、現実が厳しい状況にあることを示している。

 もちろん、その趣旨は、「すべての幹部と党員と勤労者は果敢な勇気と奮発力、投身力を発揮して今年の闘争目標完遂に総決起しなければならない」との訴えにあるのだが、そうした訴えそのものが、まさに現状の厳しさの反映と言えよう。

 ただし、付言するならば、最優先課題に位置付けた農業部門の今年の作況は比較的順調であり、都市・農村での住宅建設も着実に進展している模様である。したがって、北朝鮮指導部としては、これらの側面に焦点を当てることにより、工業部門では前述のような苦戦が続いたとしても、今年の経済建設の「偉大な成果」を喧伝することも可能と考えられる。更に言えば、軍事部門での整備進展の成果をもって、「錦上花を添える」のであろう。