rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年10月10日 朝鮮労働党創建記念日関連動向を報道(国家航空宇宙技術総局研究士の論評も)

 

 党創建記念日にあたる本日の「労働新聞」は、標記関連記事を多数掲載している。

 まず、第1面に「朝鮮労働党は主体革命の嚮導的力量として百勝を轟かすであろう」と題する長文の評論を掲載している。

 同評論は、前段では、創建以来の党の活動に関し、「80年に近い長久な期間、朝鮮労働党は、嚮導的力量として革命の運命、国家の運命、人民の運命に責任を負い導く自らの領導的使命に常に忠実であった」とした上で、とりわけ金正恩執権時期について、「継承と発展で刻まれたこの10余年により、我が党の栄光あふれる百勝の歴史と伝統が変わることなく輝きを放ち血気旺盛な若さで威容を轟かす我が党の今日があり、まさにこの10余年があって千万年乗勝する我が党の未来が確固として担保されている」と自賛している。また、後段では、そうした党の嚮導的機能として、「我が国家の尊厳と国力を絶対の高みにのぼせた強力な政治的参謀部である」、「我が人民を自尊心と創造力が強い偉大で立派な人民として育てた偉大な師匠である」と主張している。後者に関しては、「人民に対する最大の愛は彼らを自主的な思想意識の体現者、創造的能力の所有者として育てることである」とも主張している。

 次に、関連行事としては、9日に、「党創建78周年慶祝公演」(開催場所不詳、功勲国家合唱団、旺載山芸術団、万寿台芸術団出演、崔竜海、李日換、呉守容、朴泰城ら観覧)をはじめとして、「平壌市青年学生たちの夜会」(金日成広場)、「女盟幹部と女盟員たちの慶祝集会」(女性会館)、「青年中央芸術宣伝隊公演」(青年中央会館)などが開催されたのに続き、「10日(午前)零時」に「国旗掲揚式」(金日成広場)が実施されたことが報じられている。

 これら一連の行事で特徴的なことは、党創建記念日であるにもかかわらず、「党旗」ではなく「国旗」が掲揚され、記事の中でも「共和国の国力と国威」、「共和国の尊厳と地位」などが繰り返し強調されていることである。この点は、前述評論の主張とも符合する。

 こうした現象は、現在の北朝鮮において、党と国家そして領導者(金正恩)が一体のものとみなされ、その「尊厳」の高さがそれらの正統性の担保であり徴表であるとされていることをうかがわせるものといえよう。

 なお、3度目の偵察衛星打ち上げが「10月」と予告されていたことから、党創建記念日である10日までに実施されるのではないかとの観測もなされていたが、正午までの報道を見る限りでは、それはないようである。

 ただ、それに代えての意味か否かは明らかでないが、本日、朝鮮中央通信が「国家航空宇宙技術総局研究士」の肩書を持つ者(李城鎮・音訳)の名義による「「先制的な侵略戦争企図を狙った米国の宇宙軍配備騒動」(同日付け)と題する文書を報じている(「労働新聞」には未掲載)。

 同文書は、米国宇宙軍の最近における「日本防衛省と宇宙分野での共謀結託」や「傀儡地域(韓国)」への「配備」と米韓演習への「史上初めての・・参加」などの動きを指摘した上で、「(そうした動きの)真の目的は、宇宙空間を利用して周辺国に対する先制打撃能力をより向上させることにより、我々と中国、ロシアをはじめとした地域軍事強国に比した軍事的優勢を保障し、究極には自らの侵略的な世界覇権戦略を武力で実現しようとするところにある」ときめつけている。また、北朝鮮の対応については、「(そうした)状況において軍事偵察衛星をはじめとした宇宙開発事業は、我が国家の安全利益と生存権を担保するための必須不可欠の戦略的選択となる」と主張し、「米国とその追従勢力どもの軍事的脅威と侵略的企図に対処し、国家の自主権と領土完整を守護し地域の平和と安全を保障するための自衛的国防力強化に拍車を掛けていくであろう」と予告している。

 基本的には、従来の主張の繰り返しであるが、「我々と中国、ロシア」の3国をあえて列挙したところが興味深い。