rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年2月26日 金正恩平壌市西浦地区新街区建設着工式に出席、演説

 

 本日の「労働新聞」は、2月25日、金正恩が「愛するお子様」と共に、青年を動員して建設する平壌市西浦地区新街区の着工式に出席し、演説を行った後、「初シャベル」を入れ、また、発破ボタンを押すなどしたことを報じる記事を掲載した。また、演説については、別途全文を掲載している。

 まず、「お子様」同行の意味としては、これまでの出現が、ミサイル発射、閲兵式、体育競技の参観や宴会、記念写真撮影への同行にとどまっていたのに対し、今回は、「初シャベル」入れという、形式的であるにせよ、一つの公務を金正恩及び金徳訓、趙勇元、李日換ら最高位幹部と一緒に行ったということで、より一層、政治への参加度を進めたと言えるのではないだろうか。更に言えば、工事を担当する青年層との「紐帯」を構築する(将来、このころから共に革命建設の道を歩んできたといった宣伝を行う)ことの準備作業である可能性もあろう。「後継者」説もあながち否定できない段階に至ったと感じる。

 次に、青年層を動員しての同街区建設の意味・狙いについては、金正恩が演説の中で端的に述べているので、それを紹介したい。

  • 「党の意図は、我が青年が首都の大建設戦闘場において朝鮮青年固有の英雄性と愛国的献身性をより力強く轟かせ、革命の継承者、労働党の後備隊、社会主義建設の力軍としての準備をよりしっかりと備えるようにしようというものです」、「(現在、平壌では華城地区第2段階工事、江東温室農場建設が並行しており、いずれも重要だが、中でも、この)新街区建設に対しては、特別に一層の関心を寄せている・・全国各地から集まった10余万の青年大軍が建設過程を通じて革命的に鍛錬され成長するという意義がより大きく貴重だからです」(→建設への参加を通じた青年の思想教育)
  • 「新街区は、主体建築発展の新たな境地を開拓する実にやりがいのある自負するにたる建設対象です。超高層住宅と多様な形式の住宅で一つの雄大な道路軸と住宅団地を成し、公共建物が調和して配置される・・特色のあるこの街区の大建築群は、我が国家の位相と飛躍的な発展相を直感的に示すことになり、最も厳しい試練と難関の中でも我々の前進と闘争がいかに上昇し発展しており、いかに力強く拡大しているかをはっきりと世の中に実証してくれるでしょう」(→壮麗な街区の更なる建設による持久路線の正当性誇示)
  • 「ここで成長した青年大軍は今後、自分の故郷都市、故郷の村に帰って、首都建設過程で学んだ闘争方式、創造的やり方で再度、変革的闘争の先頭に立つことになり、それが新街区建設で我が党が最も重要視する最高の結実です」(→平壌を模範とした地方の整備促進の担い手養成)

 要するに、全国の青年を動員したこの新街区建設は、単に平壌市内の住宅建設を加速するという「一つの建設事業ではなく、我が革命の性格を表す一つの政治闘争です」ということであろう。

 ちなみに、同街区の住宅数について、金正恩は、昨年末の中央委全員会議で打ち出したときは「3,700世帯」と言っていたが、この演説では、「4,100世帯」と言っている。いずれにせよ、なかなかの大工事になりそうである。