rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年3月25日 弾道ミサイルを発射

 

 報道によると、北朝鮮は、本日朝、東海岸・元山市付近から弾道ミサイル2発を発射した。

 これに先立つ21日には、西海岸・南浦市から短距離巡行ミサイル2発を発射したことも最近になって報じられていた。

 後者は国連決議に違反しない一方、前者は違反することになるとの違いはあれ、これら一連のミサイル発射の背景に対米関係に絡む思惑が込められていることは間違いないであろう。

 北朝鮮は、バイデン政権の発足後、その対北朝鮮姿勢を注視してきたとみられるが、このところ、それに対する警戒、不満などを抑制的ながら様々な形で表出させてきた。その始まりは、3月16日の金予正名義の談話発表であり、その後、18日には崔善姫外務省第一副相の談話を発表、19日にはマレーシア政府による北朝鮮国籍者の米国への身柄引き渡しに反発した外務省声明発表が続いた。また、23日に明らかにされた金正恩習近平との「口頭親書」交換も対米関係を視野に入れ、それに備えるものであったといえる(以上の各事項については、その都度、本ブログで紹介・解説したところであるので、具体的な内容等はそれらを参照されたい)。

 今次ミサイル発射は、そのような不満、背景ないし準備を背景に、かねて主張してきた「強対強、善対善」の原則の下、米国が北朝鮮と「対等な対話」を行わないのであれば、北朝鮮も核戦力を含む軍事力の整備を着々と進めるとの方針を改めて誇示し、最終段階にあると伝えられるバイデン政権の対北朝鮮政策の策定に圧力を加える狙いに基づくものといえよう。

 ただし、北朝鮮としては、現時点では、まず国連決議に違反しない巡航ミサイルを発射した上で、トランプ政権下では事実上黙認されてきた短距離弾道ミサイルの発射を行うにとどめ、長距離ミサイル発射のモラトリアムというトランプ政権との合意の枠組みは、なお維持していることに留意するべきであろう。換言すると、それらの行為を通じて、今後のバイデン政権の出方によっては、その枠組みも崩壊することになることを示唆しているとも考えられる。米朝両国は、本格的な対決が再現されるのか否かの岐路に立っているといえよう。