rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年5月8日 2度のミサイル発射を報道せず

 

 北朝鮮がミサイル発射を実施したにもかかわらず、それに関する報道を行わない事例が相次いでいる。

 韓国軍発表によると、5月4日午前12時3分ころ、平壌順安から東海(日本海)に向け弾道ミサイルを発射、飛行距離約470㎞、最高高度約780㎞であったという。

 北朝鮮は、これに関しなんら報道していない。こうした対応は、去る3月16日、火星17と推定されるミサイルを発射したものの、高度10㎞以下で爆発が観測され実験失敗とみなされた際と同じであり、今次発射についても、改めて同ミサイルの発射を試みたが、再度失敗(2段目の飛翔中に飛行軌跡に異常が発生後、爆発)した可能性が指摘されている。

 また、7日午後2時7分ころ、咸鏡南道新浦海上から東海(日本海)に潜水艦発射弾道ミサイルSLBM)と推定される短距離ミサイル1発を発射、飛行距離約600㎞、最高高度約60㎞であったという。同発射についても、8日の「労働新聞」などは報道していない。

 北朝鮮SLBM発射は、昨年10月19日以来であるが、この時は、翌日に、党中央委員会軍需工業部の劉進部長、金正植副部長及び国防科学院指導幹部が指導、「側面機動及び滑空跳躍機動をはじめとした多くの深化した操縦誘導技術が導入された新型」などと報道された。ただし、その際、発射の影響で潜水艦に何らかの故障が生じたのではないかとの観測もなされていた。

 今次発射未報道の理由は、定かでないが、やはり何らかの不都合が生じた可能性が高いと考えられる(大成功であれば、報道するはず)。

 ミサイル発射実験の不成功がこのように相次ぐのは過去には余り例のないことと思われる。その背景には、北朝鮮(又は開発部門)が何らかの理由により、功を焦っているとの事情があるのではないかと推察される。ただ、その理由とは何かと問われると、先の金正恩の自作自演ともみられる「火星17成功」報道の虚偽暴露による権威失墜のおそれ挽回の必要性といった内部的な要因、対北強硬姿勢を顕著化しつつある韓国保守政権(及びその加速を企図する米日)に対する牽制の必要性といった対外的な要因などが思いつくが、確たるところは分からないのが実情である。

 いずれにせよ、焦りの余り過剰な行動に出ないことを願いたい。