rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年4月17日 「新型戦術誘導武器」の試験発射実施、金正恩が参観

 

 本日の「労働新聞」は、金正恩が「新型戦術誘導武器試験発射」を参観したとの記事を掲載している(発射期日には言及なし)。同記事の骨子は、次のとおりである。

  • 同行者:党中央委(軍需工業部)副部長金正植、国防省指揮メンバーと朝鮮人民軍大連合部隊長(軍団級部隊指揮官)
  • 新型武器の位置づけ:「前線長距離砲兵部隊の火力打撃力を飛躍的に向上させ、朝鮮民主主義人民共和国戦術核運用の効果性と火力任務多角化を強化する上で大きな意義を有する
  • 試験発射結果:「成功裏に実施」、金正恩が「国防科学部門が我が党第8回大会で提示した中核的な戦争抑制力目標達成において相次いで獲得している成果を高く評価され、党中央委員会の名前で熱烈に祝賀」
  • 金正恩言動:「国の防衛力と核戦闘力武力をより一層強化する上で提起される綱領的な教えを下さった」

 同記事には、発射状況を観察する金正恩及びそれを取り巻く軍高官の姿を映した写真4枚とミサイルの発射・飛行・着弾状況などを写した写真4枚が添付されている。それによると、同ミサイルは、4連装の発射機を積載した装輪式輸送車両(TEL)から発射され、島に着弾した模様である。

 なお、韓国報道によると、韓国軍は、同報道の後、北朝鮮が16日午後6時ころ、咸興付近から東海(日本海)上に2発の発射体を発射し、その最高高度は約25㎞、飛行距離は約110㎞、最高速度はマッハ4以下であったと明らかにしたという。

 また、今次発射のミサイルについては、KN23(いわゆる北朝鮮イスカンダルミサイル)に類似しているが、それを小型化した新型ではないかなどとの推測がなされている由である。

 北朝鮮の以上のような報道は、同ミサイルが前線軍団に配備される戦術核兵器として開発されたことを示すものである。その意味するところは、従前、核兵器は、もっぱら戦略軍において使用することを想定していたところ、同ミサイルについては、一般の軍団に配備し、戦術レベルでの核兵器利用の可能性を開いたということであろう。今次試射を軍団指揮官に参観させ、金正恩が彼らに対して、「核戦闘力武力をより一層強化する上で提起される綱領的な教え」を示したと報じたのは、そうした含意を敢えて示すものと考えられる。

 ただ、実際に核弾頭を軍団レベルに配備するのかといえば、懐疑的にならざるをえないが、対外的に、それを搭載可能な兵器の前線部隊への配備を通じて、核の「敷居」が低くなっていることを示すことができよう。そこには、4月4日付け金予正談話で韓国の「先制打撃」に対する「核使用」を明言した(5日付け本ブログ参照)のと同様、核の威力で韓国を威嚇(よく言えば抑止)しようとの狙いが感じられる。