rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2024年8月26日 金正恩の地方工業工場建設に対する現地指導を報道

 

 本日の「労働新聞」は、金正恩が8月24,25の両日、地方工業工場の建設現場(複数・具体的地名は不詳)を現地指導したことを報じる記事を掲載した。その骨子は、次のとおりである。

  • 同行者:趙勇元、朴正天、金才龍、朴泰成、呉秀容(以上党秘書)、朱昌日(宣伝扇動部長)、金哲三(規律調査部長)、金化成(音訳・職位不詳)
  • 工場建設に対する視察状況:「配置および園林計画図を見ながら指揮官たちから建設進捗状況の報告を受け、工事現場を見て回って実態を了解」、「全般的に総工事量の80%界線を超えた」ことに「満足を表示」、「施工の質的水準を評価」の上、「質向上・・のためには現場の指揮官と建設監督機関が要求性と役割を一層強めなければならないと重ねて強調」
  • 新課題の提起:「地方工業工場の建設とともに保健医療施設と科学技術普及拠点、穀物管理施設の建設を並行させることで、地方中興の歴史的偉業を加速させていく新しい方向を示し、その実現のための重大措置を取るという党中央の立場を宣明」
  • 保健医療施設:「地方の市・郡に、大規模の発展した病院を立派に建設・・地方工業工場の建設日程に合わせて先行させ、設備は国家的な今後の計画に従って備えてやる」
  • 科学技術普及拠点:「農村陣容の先進化、労働者階級化、科学技術人材化を早く実現する(ため)・・市・郡に『科学技術普及センター』を設けて各分野の必要な知識を普及すべき」
  • 穀物管理施設:「穀粒を加工し保管する複数の施設を通称して『穀物管理所』という概念をつくるべき・・国家が直接とらえて新たに建設・・人民に質的に加工された食糧を供給できるようにすべき」
  • 軍部隊への指示:「軍を信じて勇断を下したと述べ、地方工業工場の建設に動員された各軍部隊が人員編成と陣容調節を抜かりなくし、工事日程の手配を綿密に行って新しく課された課題を遂行するようにさせるための具体的な方向を示した」
  • 今後の推進方向:「より膨大になった地方発展10年目標の細部計画と具体的な遂行方途を当該部門の責任幹部が深く研究し、(党中央委)12月全員会議で討議・審議および決定・採択」

 前述のとおり、今次金正恩の「現地指導」の具体的訪地は、明示されていないが、それは、今次「現地指導」が個別の工場の建設状況そのものに対する指導よりも、むしろ、新たな方針、すなわち、地方工業工場建設と並行した形での保健医療施設・科学技術普及拠点・穀物管理施設の建設推進を打ち出すことに主な狙いがあったためであろう。

 そして、それを各地で地方工業工場の建設を担当している軍部隊に担当させるというが、既存の「124連隊」の手には余るものであろう。おそらく、各連隊を派遣した親部隊は、それぞれ相当の追加力量を派出することを余儀なくされると考えられる。いかに金正恩から「党政策の徹底した擁護者、支持者、貫徹者であり、新しい時代の文明の開拓者、人民の幸福の創造者である我が軍」と持ち上げられても、その負担感は大変なものと想像される。

 なお、本日の本ブログ別項記事で既述のとおり、本日の「労働新聞」には、24日に行われた金正恩無人機実験の現地指導に関する記事も同時に掲載している。24日の動向であれば25日に掲載することも可能であったろう。それにもかかわらず敢えて1日遅らせて、本件記事と同時に掲載したとすれば、それは、軍備増強だけに注力しているわけではなく、それ以上に民生向上に力を注いでいるとの姿勢をアピールするためであったとも考えられる。やや深読みし過ぎかもしれないが、翻って見ると、過去にも、金正恩の軍事関係と民生関係の動向が同時に報道されたことが少なからずあったように思われる。

 それと、同行者末尾に名前のある金化成は、聯合通信ホームページの「北韓人事情報検索」には、顔写真もなく2021年12月に中央委員に選出されたことしか掲載されていない。しかし、添付写真を見ると、従前から金正恩の各種建設活動への指導等に際しても必ずと言ってよいほど同行しながら氏名が報じられてこなかった人物(比較的背が高く、禿頭。今次は紺色上着着用)が金正恩に最も間近で頻繁にやり取りしている姿が写し出されている。あるいは、同人が金化成なのかもしれないが、いずれにせよ、実際の職位は不詳であり、注目される。