rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2024年2月8日 金正恩の金化郡地方工業工場への現地指導を報道

 

 本日の「労働新聞」は、金正恩が2月7日、金化郡の地方工業工場を現地指導し、工場設計上の問題点を指摘したことなどを報じる記事を掲載した。その骨子は、次のとおりである。

  • 同行者:趙勇元、李日煥、朴正天(以上党秘書)、金勇帥(党財政経理部長)、金予正(党副部長)、金華城(音訳、党中央委員、職責不詳)
  • 指導対象:食料工場、日用品工場、製紙工場
  • 指摘事項:「食品工場をはじめとする地方産業工場の建築設計が工場の特性と用途に合わせて、実用的見地から合理的にできなかった欠点が少なくない」
  • 強調事項①:「原料拠点の構築とその条件および保障の可能性についてよく確かめ、経済的打算を正しくするのが重要」
  • 強調事項②:「新たに建設する地方工業工場の建築形式と近代化水準を金化郡よりも高く定めること」、「金化郡地方工業工場の近代化の経験を機械的に踏襲して模倣するのではなく、革新的で創造的な姿勢で不断に新しいものを取り入れ、欠点を克服(すべき)」
  • 今後の方針:「当該の市、郡の具体的な特性と経済的潜在力、発展展望性と人口など、細部条件が十分に考慮され、科学的な打算の下で地方工業工場の規模と生産能力、建設敷地が設定され・・それに基づいて工業建物の設計が実用的見地から改善され(るべき)

 金化郡の地方工業工場は、いうまでもなく、金正恩が主導して開始した「地方発展20×10政策」のモデルである。

 今次「現地指導」は、同政策の本格的始動に際し、敢えて同郡の工場の問題点などを指摘することによって、今後各地に建設される地方工業工場が単に金化郡の工場をそのまま模倣・複製するのではなく、各地方の実情を慎重に検討し、とりわけ操業後の原材料確保などを十分に配慮した形で設計されるよう改めて訴えることを目指したものであろう。

 ちなみに、上掲の強調点①、②は、いずれも金正恩が先の党政治局拡大会議においても強調した点である。それを改めて訴えたのは、「(金化郡の工場に)欠点が少なくないが、これを経済幹部が正しく見られず、はっきりした一見識もなく対策も立てていない状態で、新たに提示された『地方発展20×10政策』を金化郡地方工業工場のように機械的に模倣するとしている」ためであろう。本ブログでかねて指摘しているところだが、金正恩の「経済指導幹部」に対する不満・不信は、実に根深いように思われる。