rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年8月24日 衛星打ち上げに再失敗、金正恩の金星トラクター工場現地指導を報道

 

 既に広く報じられているところだが、本日、朝鮮中央通信は、国家宇宙開発局が「8月24日未明、平安北道鉄山郡西海衛星発射場偵察衛星『万里鏡―1』号を新型衛星キャリア・ロケット『千里馬―1』型に搭載して第2次打ち上げを断行」し、「『千里馬―1』型の1段と2段は全て正常飛行したが、3段の飛行中、非常爆発システムに誤りが発生して失敗した」ことを報じた。

 同記事は、また、国家宇宙開発局が「(失敗の)原因を徹底的に究明して対策を立てた後、来る10月に第3次偵察衛星の打ち上げを断行する立場を表明した」としている。

 偵察衛星の打ち上げは、去る5月31日に次ぐものであったが、再度の失敗により、「9・9」節に先立っての汚名返上どころか、恥の上塗りという結果に終わったことになる。干拓地の堤防決壊を契機に内閣総理以下の行政経済幹部を猛批判し、後述のとおり自ら経済部門への現地指導を再開した金正恩の出鼻を挫くような出来事と言わざるを得ない。失敗直後に「(事故原因は)大きな問題ではない」として、10月の再打ち上げを表明したのは、そうした焦燥感の反映のように思われる。

 さて、その経済部門への指導だが、本日の「労働新聞」は、金正恩が8月23日、金星トラクター工場を「現地指導」したことを報じる記事を掲載した。その骨子は、次のとおりである。

  • 同行者等:趙勇元秘書、呉守容秘書、金予正副部長。機械工業省輪転機械工業指導局長らが出迎え
  • 同工場の現況:「(金正恩の2017年11月の現地指導を受けて)過去5年余りの期間、工場改造現代化を推進(し)・・昨年1段階改造現代化事業を終え、現在2段階事業を積極的に推進して・・いる」
  • 視察状況と評価:「1段階改造現代化期間に進められた設備現代化と生産能力造成実態、対象工事進行状況を了解」、「改造現代化目標を無条件に達成するため粘り強く努力した結果・・生産原価を低めつつも実用的で能率と美的価値を備えたトラクターを生産できる土台を構築したことについて高く評価」。「年間トラクター生産能力を拡張」、「労働生産環境を立派に整備・・従業員を現代科学技術でしっかりと武装させる事業」などについても、それぞれ「評価」「満足を表示」
  • 更なる目標提示:「農機械工場を画期的に跳躍させることは・・我々の荘厳な革命闘争において根本の根本である食糧問題を解決する上で最も切実な問題」と強調の上、「現在進行している改造現代化(は)一定の成果もあるが、党中央が構想する展望的な農機械工業発展の見地からすると、不合理な問題が存在する」と指摘、「貫徹していくべき改造現代化規模と目標について具体的に明らかにされた」。「現行農業生産のための可視的な目標にだけ限定するのではなく、総合的で現代的な面貌を備えた農機械生産工程を世界的水準に即して備え、大々的な生産土台を構築」することを訴え
  • 展望的農機械発展戦略の策定:「(今年の)年末に招集される党中央委員会第8期第9回全員会議において展望的な農機械発展戦略について討議審議できるよう、該当部門において国の全般的な農業下部構造実態と農業技術力について評価資料を具体的に調査し提起」するよう指示

 こうした金正恩の「現地指導」は、要するに、これまで頑張ってきたのは一応評価するが、今後は、ちまちました目標ではなく、世界最先端を行くような水準を目指して奮起せよということであろう。朝鮮中央テレビが、このところ、外国の先端的農業機械などを紹介する映像をしばしば流していた。そうした機器類が金正恩の念頭にあるのかもしれない。ただ、金正恩得意の、こうした「壮大」な課題の付与が(同工場・部門だけでなく、他の部門への影響も含めて)現実にどのような効果を生むのか、注視の必要があろう。