rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年3月11日 金正恩西海衛星発射場を現地指導

 

 本日の「労働新聞」は、金正恩の標記動向を報じる記事を掲載した。ただし、例によって、指導の日付は報じていない。主な報道内容は次のとおりである。

  • 同行者:金正植(軍需工業部副部長)、張創河(国防科学院長)をはじめとした「軍需工業、国防科学研究部門の指導幹部と国家宇宙開発局の該当幹部」
  • 金正恩指示内容:「衛星発射場改建現代化目標を提示され、その実行のための具体的な方向と方途を明らかにされた」、「今後、軍事偵察衛星をはじめとした多目的衛星を多様な運搬ロケットにより発射できるように現代的に改建拡張し、発射場の諸要素を新設」
  • 具体的指示事項:①大型運搬ロケットを発射できるよう発射場区域とロケット縦起立及び連動試験施設、衛星連動試験施設を改建拡張、②燃料注入施設と補給系統を増設、③発射管制施設の要素と主要技術哨所を現代的に改建拡張、④発動機地上噴出試験場の能力拡張、⑤運搬ロケットの輸送便利性を保障、⑥発射場周辺の生態環境改変、⑦野外発射参観場の新設

 同報道の狙いや意義については、昨日の国家宇宙開発局に対する現地指導に際し書いたことを超えるものは特段思いつかない。強いて言えば、その傾向がますます顕著になったということであろう。

 なお、本日、韓国軍が米国との合同分析結果として、先の2回の「衛星のための重要試験」に用いられたロケットについて、2020年10月閲兵式に登場の火星17型と「関連」との見方を公表した。また、日本防衛省は、米国との合同分析結果として、それがICBMを使用との見方を表明した。日韓の政治的立場の違いから表現に微妙な差はあるが、共通の分析といえよう。それにしても、韓国大統領選挙で保守系が勝利確定するのを待つ形でこうした公表をするとは、いかにも姑息との印象を禁じ得ない。仮に李在明が勝っていたら、沈黙を守るつもりであったのだろうか。いずれにせよ、これでICBM発射のモラトリアムは、事実上中断と言えるのではないだろうか。