rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

3月22日 金正恩が「戦術誘導武器の示範射撃」を視察

 

 標記射撃は、3月21日、「人民軍部隊に引き渡される新武器体系の戦術的特性と威力を再確認し、人民軍指揮メンバーに直接見せてやるため」に行われたものとされる。

 金正恩と共に参観したのは、党中央委副部長李炳鉄及び趙勇元、金与正、洪英城、金正植、玄松月をはじめとする党中委員会幹部、軍総参謀長・朴正天と軍団長たち、である(人名音訳)。

 金正恩らを現地で出迎えたのは、「張昌河同志、全日浩同志をはじめとする国防科学研究部門の指導幹部たち」で、彼らが今次発射の実施主体であろう。

 発射結果については、「発射された戦術誘導弾は、目標島を精密打撃した」「互いに異なって設定された飛行軌道の特性と落角(落下角度の意?)特性、誘導弾の命中性と弾頭威力がはっきりと誇示された」としている。

 報道写真に示されたミサイル発射車両及びミサイル本体の形状は、昨年8月10日及び同16日に、それぞれ金正恩の「指導」の下で実施された「新武器の試験射撃」の際のものと酷似している。その16日の試射については、当時「完璧な結果を示し、この武器体系に対するより大きな確信を固めることができた」と報じられた。今次発射は、同ミサイルの開発が最終的に完了し、軍部隊に配備されるに先立つ最後の確認とみて間違いないであろう。

 なお、聯合通信の報道によると、韓国軍の観測では、同ミサイルの発射は、3月21日午前6時50分ころ、平安北道先川付近から東北東に向け、約5分間隔で2発発射、飛行距離約410キロ、高度50キロであったという。また、飛行軌道中に滑空・上昇などもみられ、いわゆる「北朝鮮版ATACMS」と推測しているとの当局者の発言やこのような軌道特性から迎撃が困難になるとの見方などを伝えている。

 今回の試射は、先般、「超大型放射砲」が既に軍部隊に配備されていることを誇示したのに続き、同ミサイルも軍部隊への「引き渡し」が近いことを誇示したもので、北朝鮮が昨年の連続的な試射により開発を進めた新型誘導兵器を次々に実用化していることがうかがわれる。

 以上のような事実は、北朝鮮の戦力を評価する上で重要な出来事であろうが、今次試射に関する報道の中で伝えられた金正恩の次のような発言には、それ以上に重要な示唆が含まれていると考える。

 「我々が最近に開発した新型武器体系と開発中にある戦術及び戦略武器体系は、国の防衛戦略を画期的に変えようとする我が党の戦略的企図実現に決定的に貢献するであろう」

 「いかなる敵でも、万一我が国家に反対する軍事的行動を敢えて企図しようとするなら、領土外で消滅できる打撃力をいっそうしっかりと固めなければならない、まさにこれが我が党が打ち出した国防建設目標であり、最も完璧な国家防衛戦略であり、本当に信じることのできる戦争抑止力である」

 すなわち、昨年の一連の新型兵器開発は、「国の防衛戦略を画期的に変える」ためのものであり、それら兵器によって実現される戦力こそが「本当に信じることのできる戦争抑止力である」というのである。

 端的に言ってこれは、これら先端的ミサイル兵器によって、従前、核兵器に期待してきた「抑止力」を代替しようとの構想を示すものではないだろうか。そのような見方は、私がかねて推測してきたところでもあるが、我田引水かもしれないが、金正恩の上掲発言はそれを裏付けているように思えてならない。