rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

3月21日 金正恩朝鮮人民軍西部戦線大連合部隊の砲射撃対抗競技を指導

 

 金正恩が3月20日実施された標記「競技」を指導したとの記事。3月12日に実施された「第7軍団と第9軍団管下砲兵部隊の砲射撃対抗競技」と同種の活動とみられる。ただし、今回は、第3軍団、第4軍団、第8軍団の3つの軍団が参加している。聯合通信によると、第3軍団は南浦に所在、第4軍団は黄海南道海州に司令部を置き、第8軍団は平安南道陽徳に所在、とのことで、西側(黄海)沿岸を守る各軍団が参加したことになる。

 同「競技」の目的は、12日の際とほぼ同じで、「我が党の砲兵武力強化方針を貫徹している西部戦線砲兵武力の準備実態を不意に検閲評価し、対策して全般的部隊を覚醒させることと共に砲兵訓練のすべての形式と内容、方法を根本的に改善し、平時訓練を戦争に徹底して対処することのできる実用的な実戦訓練へと確固として転換」させることとされている。

 競技方法も前回とほぼ同様で、結果は、第3軍団が特出した成績で1位、8軍団が2位、4軍団が3位であったという。金正恩は、3軍団の成績に大いに感激した模様で、授与される受賞状の上に「大隊の驚くべき戦闘力に感服する。大いに満足し特別感謝を与える。金正恩 2020・3・20」と「親筆」を書き与えたとされる。逆に、第4軍団は、前線所在の部隊であるのに最下位で、意外な印象がある。関係者は情けない思いであろう。

 金正恩の親筆文書からは、同「競技」に参加したのは、各軍団所属の砲兵大隊であったとも考えられる。目的の中で示された「不意に」というのは、各軍団に多数ある砲兵大隊のうち、特定の大隊を突然指名して、という意味ではないだろうか。

 また、報道写真を見る限りでは、使用された装備は、牽引式大砲が中心で、ほかに自走砲及び放射砲もあるが、全般的に前回とほぼ同じかあるいはやや旧式・小型な武器との印象を受ける。目的として示されたところからもうかがえるとおり、戦力の誇示というよりは、部隊の「覚醒」すなわち引締めに重きを置いた活動であったといえよう。

 なお、報道では、本日(21日)、北朝鮮は中朝国境に近い東海岸平安北道先川・音訳)から短距離ミサイル2発を発射したとのことで、この「競技」の翌日にそれが実施されたことになり、一連の活動とも考えられる。その全般的な評価は、同ミサイル発射の関する北朝鮮報道(おそらく明日出されるであろう)を見た上で示したい。

 最後に特筆しておきたい点は、軍事に関する話ではないが、報道写真で、金正恩を囲む軍人らが誰もマスクを着用していないことである。12日の「競技」の際は、全員がマスク着用であったのとは極めて対照的である。去る17日の平壌総合病院着工式の際にも、金正恩がマスクを着用していない高官らに囲まれて談笑しているような写真が掲載されたが、その際は、式典中には高官らはマスク着用であった。徐々に対応が緩和されているといえるのではないだろうか。金正恩の安全確保というのは、いうまでもなく北朝鮮においては、最優先事項中の最優先事項であり、それに関連してこのよう変化が生じていることは無視できない意味を持つと考える。

 更に、最高人民会議常任委員会が、20日、最高人民会議第14期第3回会議を4月10日に召集することを決定したことが報じられた。このような決定も、北朝鮮指導部がコロナウイルス対策に一定の自信を持ったことを示しているといえるのではないだろうか。