rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

4月10日 金正恩が「朝鮮人民軍軍団別迫撃砲分隊の砲射撃訓練を指導」

 

 訓練の実施期日への言及はない。金正恩のほか「党中央委員会幹部たち」が訓練を参観し、総政治局長・金吉洙、総参謀長・朴正天及び軍団長達が出迎えたとされる。

 同訓練の実施目的は、「軍団別迫撃砲兵たちの火力戦闘能力を競技進行の方法で判定評価し、訓練革命の熱気と成果を拡大していくことともに、人民軍隊に装備された軽砲、重武器の性能実態を了解すること」とされている。

 訓練の方法は、「抽選で定めた射撃順序により各軍団から選抜された迫撃砲兵区分隊が火力陣地に進出し目標を射撃した後、命中発数と火力任務遂行にかかった時間を総合して順位を定める方法」で行われ、「(各)軍団長が自分の軍団の迫撃砲兵区分隊に対する火力指揮を受け持って行い、砲射撃方法は彼ら(軍団長)の決心によって規定することとした」という。 

 訓練結果については、第2軍団と第10軍団が「砲弾60発中60発を正確に目標に命中させた」とされ、第2軍団管下迫撃砲兵中隊が1位を獲得したとされる。

 なお、訓練参加部隊については、「各軍団から任意の区分隊を指定し訓練場に集結させて、不意に訓練を組織した」とされる。各軍団が管下の部隊の中から優秀な部隊を選抜して参加させるのではなく、中央から各軍団に対して、任意に選んだ特定の部隊(今回は中隊であろう)を指定して参加させたという趣旨と考えられる。各軍団の実情を把握するための措置であろう。

 最近報じられてきた金正恩指導下での軍事訓練が短距離ミサイル及び長射程の火砲を用いたものであったのに対し、今回の訓練は、短射程の迫撃砲部隊を対象にしたものであった点が特徴といえる。ただ、各軍団から選抜された部隊対抗の競技形式とした点、各軍団長が管下部隊を直接指揮した点などは、従前の訓練と共通している。形式化を避け、少しでも実戦的な訓練を求める金正恩の意向を反映していると考えられる。

 なお、実施目的の後段部分は、端的に言えば、各部隊に配備されている在来兵器がまともに作動するかを確認するという趣旨であろう。それだけ、老朽化が進んでいることを反映していると考えられる(「重武器」というのは意味不明だが)。

 総じて言えば、末端の平凡な部隊に脚光を当て、それらの底上げを目指したものであったと考えられる。

 ちなみに、軍事面からは話題がそれるが、標記記事の添付写真では、訓練を視察する金正恩の周囲の軍高官10数名(大半が全国各地から集合した軍団長であろう)は、いずれもマスクを着用していない。ここからも、全国的にコロナウイルスの脅威を基本的に収拾できたとの認識がうかがえる。

 ただ、本日開催されているはずの最高人民会議に関していうと、例年報じられている代議員の平壌到着の報道がないなど、異例な対応もうかがわれる。そういう意味からも同会議の開催状況が注目される。