rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

3月3日 砲兵部隊の編制について(「前線長距離砲兵区分隊火力打撃訓練」補論)

 

 本日の前掲記事において「超大型放射砲」の配属部隊に言及した。その点について、若干敷衍・整理しておきたい。

 まず、指摘したいのは、昨年12月22日付け「労働新聞」で掲載された朝鮮労働党中央軍事委員会第7期第3回拡大会議に関する記事の中で、「党の軍事戦略企図に合わせ、新たな部隊(複数)を組織し又は拡大改編する問題」などが討議決定されたと報じられていることである。

 その上で、今次訓練において、「前線長距離砲兵区分隊」との名称が用いられたことの意味を考えてみたい。従前には、長射程の自走砲などを装備した「長距離砲兵区分隊」が存在していた。しかし、その種兵器は、2月28日の訓練に参加していることが報道写真からうかがえる。したがって、やや乱暴な推測であるかもしれないが、今次登場した「前線長距離砲兵区分隊」は、2月28日の訓練に参加した、長射程の火砲・自走砲や120mm型などの旧来型放射砲などで編成される一般の砲兵部隊とは異なる、新たな種類の部隊ではないかと考える。ちなみに、「区分隊」とは、概ね連隊級ないし大隊級の規模の部隊を指す用語である。

 その「前線長距離砲兵」部隊が装備すると見られるのは、昨年10月、11月の試射を経て今次実戦配備されたとみられる「超大型放射砲」と従来は軍団の砲兵部隊に配備されていた「240mm放射砲」であろう。後者は、射程が数十キロ以上とされ、例えば非武装地帯北側からソウルへの打撃も可能であったことから、戦略的な目的に用いられるという点で前者と共通していることから、一つの体系の下に編制されたと考えられるのである。

 では、なぜ、そのような部隊が前線軍団の隷下に置かれているのかと言えば、(私としては、前述のとおり戦略軍に配属されると予測していたのだが)、実際の部隊所在地が前線軍団管轄地域内にあり、平時における各種の補給・後方支援や指導・連絡・統制などは、当該軍団を通じた方が円滑・便利であるためではないだろうか。ただし、これら部隊については、有事における作戦指揮は、当該軍団ではなく、最高司令部(総参謀部)又は戦略軍が行うと考えられる。ソウルあるいはそれ以南の要地(例えば米軍基地など)に対する攻撃は、高度の戦略的判断を要するものであり、前線軍団の判断に委ねるわけにはいかないからである。今次訓練の報道において金正恩を出迎えた者として、「大連合部隊(=軍団)指揮メンバーたち」に続けて「砲兵指揮メンバーたち(=区分隊指揮官)」が並記されたのは、以上のような事情から、これら「区分隊」が所属軍団に対して一定の独立性を有しているからではないだろうか。

 そして、まさに、そうして編制された「前線長距離砲兵」部隊の「初舞台」が今次訓練であったのではないか、というのが私の推測するところである。