rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

3月4日 政治局拡大会議関連動向フォローアップ

 

 先月末の政治局拡大会議における「官僚主義」批判をめぐって、その意義を金正恩の「人民大衆第一主義」の発露として強調し、その実践を訴えるキャンペーンが開始されたことは、3月2日の本ブログで紹介したとおりであるが、そのような動きは更に続いている。3日、4日の「労働新聞」紙面の関連報道を簡略に紹介したい。

 まず、3日には、「人民のために滅私服務しよう」と題する政論が掲載され、「今日の滅私服務戦は、一心団結擁衛戦であり、社会主義守護戦である」こと、つまり「純潔な良心の足跡を残す幹部たちを見るとき、人民の心の中には偉大な党に対する感謝の情がこみ上げ、それがすなわち労働党万歳の声、社会主義万歳の声へとつながることになる」との認識を示した。ここには、幹部のイメージ即党のイメージ即社会主義体制のイメージであり、幹部が人民から好感を持たれることがすなわち体制の保全につながる、換言すれば、幹部の官僚主義的姿勢、不正腐敗などが体制を危うくするとの考え方が如実に示されている。

 また、同日掲載の評論「党中央委員会政治局拡大会議精神を党事業実践に徹底して具現していこう  絶対的基準―人民の要求と利益」は、「党幹部は、人民が望むことであれば、石の上にも花を咲かせ、天の星でも取って来るとの崇高な献身の精神を帯びて人民のために足が擦り切れるほど奔走しなければならない」と「滅私服務」を強調した上で、各地の模範事例を紹介している。

 4日にも同旨の記事が多数掲載されており、評論「一心団結の威力で前進する我が革命は百戦百勝する」は、政治局拡大会議を「偉大な我が党の人民的性格と非常な領導的権威をもう一度激動的に誇示した歴史的な会議」と形容して、そこでの「官僚主義」批判を革命の勝利を担保するものと意義付け称えている。

 また、同日には、「幹部たちは人民のために献身する忠実で勤勉な下働きになろう!」との共通タイトルの下、「一番貴重な財富ー民の信頼」、「崇高な本分を自覚して 『従僕手帳』を胸に懐いて」などと題して、模範的な幹部の活動事例を紹介する記事も掲載されている。ここで使用されている、「下働き」「従僕」などの表現は、幹部の傲慢な姿勢を戒め、人民の奉仕者としての自覚を求める狙いを端的に象徴しているといえよう。

 以上のようなキャンペーン展開の背景としては、やはり伝統的な観念に基づく幹部の「官僚主義的姿勢」が根深く、かつ顕著に存在していたのであろう。そして、金正恩の目には、それこそが体制の存続を脅かす危険な要因(同時に彼が望む発展を阻害する要因)として映っていたのであろう。その意味で、このような「官僚主義」批判キャンペーンは、「正面突破戦」と軌を一にするものといえる。金正恩は、党内で発覚した何らかの官僚主義現象ないし不正腐敗問題などを大々的に批判することによって、開始以来2か月が経過した「正面突破戦」を改めて加速することを目指しているとも考えられる。そうであるとすれば、彼は、「転んでもただでは起きない」なかなかのしたたか者といえよう。