rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2024年3月8日 金正恩朝鮮人民軍大連合部隊の砲撃訓練指導を報道

 

 本日の「労働新聞」は、金正恩が3月7日に実施された標記訓練を指導したことを伝える記事を掲載した。その骨子は、次のとおりである。

  • 同行者等:同行者等:朴正天党秘書・軍事委副委員長、迎接者:強純男国防相、李英吉総参謀長と朝鮮人民軍大連合部隊長達
  • 訓練目的:「朝鮮人民軍大連合部隊管下砲兵部隊の火力打撃能力を威力示威と競技の方法で検閲、評価して、砲兵の戦闘動員態勢と実戦能力を向上させる」
  • 訓練概要:①「敵の首都を打撃圏内に置き、戦争抑制の重大な軍事的任務を遂行している国境線付近の長距離砲兵区分隊(複数)の威力射撃示威」、②「大連合部隊から選抜された砲兵区分隊(複数)が火力陣地を占め、目標を射撃した後、命中発数と所要時間を総合して順位を決定」(大連合部隊長が自己の部隊に対する火力指揮を担当)
  • 金正恩言動:「砲兵戦闘員を熱く祝賀激励」、「砲兵戦争準備完成に提起される重要課題を提示」、「恒常的な戦闘動員準備」や「実働訓練をより実質的に組織実施」などを指示

 なお、記事に添付された写真には、各種自走砲のほか、放射砲を搭載した各種車両の姿もあった。

 金正恩による軍の訓練指導に関する上記報道は、昨日に続くものであり、現在実施中の米韓合同軍事演習に対抗しようとの強い意欲がうかがわれる。

 上記報道で注目されるのは、「敵の首都を打撃圏内」とする砲兵火力(おそらく放射砲などを主力とするのであろう)の任務について、「戦争抑制」を挙げている点である。こうした兵器による「ソウル火の海」化の威嚇を抑止力として位置づけていることを改めて示したものといえる。

 また、訓練後段の大連合部隊(軍団)ごとの対抗競技において、大連合部隊長(軍団長)が直接指揮をとる形にしたことは、各軍団長の実戦能力を検証する狙いもあるのであろう。こうした方式は、今回に始まったことではないが、軍高官に緊張感を持たせるための金正恩の工夫の表れと思われる。