rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年8月24日 強純男国防相が談話発表、3国首脳会談でのウクライナ支援協議などを非難

 

 本日、朝鮮中央通信は、強純男国防相の同日付け談話を報じた。その骨子は、次のとおりである(訳語は、朝鮮中央通信日本語版を一部修正)。

  • 「去る18日、キャンプデービッドで行われた米国と日本、「大韓民国」の首脳会議なる所で、ウクライナ復元のための3国間共助を強化するための謀議が凝らされた」
  • 「米国がキエフから数千キロ離れており、事態の本質もはっきり知らないカカシどもを呼び付けて何らかの共助についてうんぬんすること自体が、国際平和と安全、人間の生に対する我慢できない愚弄であり、冒涜である」
  • 「自分らの欲深い世界制覇野望を実現するための一線の弾除けである日本と『大韓民国』の手足を『アジア版NATO』に固く縛り付けておき、一つの巨大な反中国、反ロシア包囲環を構築しようとする米国の悪巧みは、今回の密議を通じてその真面目が再度余地もなくさらけ出された」
  • 「米国とその手先が向かい合って誰それの脅威に対処した『共同の対応力』についていくら騒ぎ立てても、我が国家に反対する軍事的敵対行為をいささかも許さず、圧倒的で先制的な武力対応を断じて実行していく我々の意志と決心は絶対に変わらない」
  • 「この機会に、ロシア国防相の我が国の訪問を契機に『朝露武器取り引き説』を又も取り上げて・・いる米国に再び我々の明白な立場を明らかにする」「(米国には)主権国家が地域と世界の平和と安全守護のために国防安全分野で行う正常な協調に対してけなすいかなる法的権利も、道徳的名分もない」「我々は、・・共通の敵に反対する正義の戦いでロシアとの戦闘的友誼と団結を百倍にしていく」「米国主導の西側集団をしのぐ正義で進歩的な勢力の物心両面の支持、声援の中、英雄的なロシア軍が偉大な戦勝の歴史にもう一度栄光に輝く一ページを書き込むことになる」

 強国防相の同談話で奇妙に感じるのは、日米韓の3国首脳会談を非難するのは当然として、その矛先を同会談の主要議題であった北朝鮮に対する「共同の対応力」に先立って、まずウクライナ支援に関する「3国間共助」、そして、「反中国、反ロシア包囲環構築」に向けていることである。これでは、まるで、北朝鮮防相ではなくロシア国防相の談話ではないかと言わざるを得ない。

 更に言えば、この談話に限らず、北朝鮮は、3国首脳会談に対し正面から論じることを避けているように思われる。会談終了後、「労働新聞」に関連の論調は掲載されず、22日に発出された、「我が共和国武力は慈悲を知らない」と題する朝鮮中央通信社論評も、米韓合同演習「乙支自由の防盾」の開始を非難する中で、傍論的に、「18日、米、日、傀儡の頭目どもがワシントン周辺のキャンプデービッド別荘に集まって朝鮮半島での核戦争挑発を具体化、計画化、公式化した」直後に「その実行のための演習が展開されている」などと主張しているに過ぎない(しかも、同論評は「労働新聞」には掲載されず)。

 会談直後には、その重要性に鑑み本格的な論難を慎重に検討中とも思っていたが、非難論文を出すには、既に時間がたち過ぎた感がある。あるいは、言葉ではなく、行動をもってそれに応えようとしているのだろうか。理解に苦しむところである。

 話を強国防相の談話に戻すと、「露朝武器取引説」に対し直接には否定も肯定もしていないが、「主権国家が地域と世界の平和と安全守護のために国防安全分野で行う正常な協調」及び「米国主導の西側集団をしのぐ正義で進歩的な勢力の物心両面の支持、声援」などの表現がロシアへの武器・弾薬等の支援を示唆するものとも解釈でき、注目される。いずれにせよ、同問題が国際的な注目を集めたことが、「世界的な軍事強国同士の協力と交流」それ自体が「敵をより確実に圧倒できる方向と方途」であることを認識させる結果を招いたようである。